初代日産シーマに乗ってみた 現代でも通用するラグジュアリー体感

公開 : 2021.12.24 17:10  更新 : 2021.12.26 12:00

離陸姿勢はシーマの証

ドアを開け、運転席に座ってみる。シートには白いコットンのシートカバーが掛けられていたが、シート自体は国産車らしいモケット地。分厚い見た目相応の沈み込みを見せる。

オドメーターには9万2000kmという数字が刻まれていたが、室内のコンディションも素晴らしかった。歴代のオーナーが大切に扱ってきたことがよくわかる。

オーナーに促され深々とスロットルを踏んでみる。想像以上に強力な加速がはじまり、リアがグッと沈み込んでいるのがわかる。
オーナーに促され深々とスロットルを踏んでみる。想像以上に強力な加速がはじまり、リアがグッと沈み込んでいるのがわかる。

ステアリングは本革巻きだが、GLORIA CIMAの車名が入ったセンターのホーンパットはクルーズコントロールのスイッチのみが備わったシンプルなもの。たしかスイッチが所狭しと並べられた豪華な仕様もあったはず。

「当時よく売れたのは上級グレードのタイプIIリミテッドですが、わたしのクルマは廉価版のタイプIです」

「だから光通信のステアリングとかエアサスは付いていません。もちろんターボなしの200psです。でも発進加速ではシーマらしくリアが沈みますよ。ぜひやってみてください」

オーナーに促され深々とスロットルを踏んでみる。想像以上に強力な加速がはじまり、リアがグッと沈み込んでいるのがわかる。

車内からは見ることができないが、シーマと言えば飛行機が離陸するようなこの姿勢だ。

スプリングの型式に関係なく、セミトレーリングアームのリアサスと柔らかいセッティングの組み合わせが生んだ必然なのだろう。

現代でも通用するラグジュアリー

加速以上に驚かされたのは普通に走らせた際の乗り心地だった。

65扁平のタイヤとサスペンションがともにフワフワとしているが、車体の低さもあって少しもだらしない感じはしない。

タウンスピードで、中に乗っている人間が快適に感じるか否かという本質的な部分では、現代のサルーンに負けずとも劣らない。
タウンスピードで、中に乗っている人間が快適に感じるか否かという本質的な部分では、現代のサルーンに負けずとも劣らない。

アシが柔らかいので、相対的にボディはしっかりした感じがするのもいい。

ステアリングもセンター付近がほどよく曖昧で、ラグジュアリーな質感を帯びている。

ドライブフィール自体は現代のフルサイズのサルーンとはあらゆる部分で異なる。だがタウンスピードで、中に乗っている人間が快適に感じるか否かという本質的な部分では、現代のサルーンに優るとも劣らない。

今から30年以上も前、新車でこのステアリングを握ったオーナーが、どれほど心躍らせたかを想像するのは容易だ。

「5ナンバーとは違う、3ナンバーってすごい!」

きっとそう考え、ついついシグナルスタートではリアを沈めて発進してしまっていたのだろう。

冷静に室内を見渡すと、シフトレバーやスイッチ類など、年式を考えれば当然なのだが樹脂パーツが多い。

いざレストアするとなればパーツの確保がなかなか大変だろう。

しかも普段使い出来てしまう快適性があるので、経年劣化が進みやすいともいえる。

R32のGT-Rだけでなく、初代シーマもまた後世に伝えていかなくてはならないニッサンの名車なのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。

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