フォード・コルセアとヴォグゾール・ヴィクター 1960年代の英国乗用車 6台を比較 前編
公開 : 2022.01.15 07:05
アメリカンなヴォグゾール・ヴィクター FB
1957年に登場した初代ヴォグゾール・ヴィクターのスタイリングは、アメリカ車にインスピレーションを受けたような雰囲気が強い。英国ルートンのヴォグゾール本社で開発されたが、カナダ向けの輸出車両としても念頭にあったことが理由だろう。
実際、ヴィクターはシボレーとオールズモビルのディーラー網から、エンボイという名前で販売されている。一方で英国のドライバーたちは、英語のアメリカンなアクセントへ惹かれるように、このルックスへ関心を寄せた。
1961年、ヴォグゾールは2代目ヴィクター FBを発表。その3年後には、3代目のFCへモデルチェンジしている。
今回お越しいただいたデイブ・トラウトン氏は、2011年からブラックの2代目ヴォグゾール・ヴィクター FBを大切にしている。だが、ヴィクターとの結びつきはずっと幼い頃に生まれていたと振り返る。
「父はヴォグゾールの商用車を手掛けていたベッドフォード社で、シャーシ開発に関わっていました。ヴォグゾールは社員割引が効いたそうです。父は同社の乗用車として、ヴィクター FBはベストの1台だと話していました」
110km/hくらいでも驚くほど滑らか
「この1963年式を発見したのは、売買サイトのイーベイ。入札していたのですが、誰かが大きな金額を提示し、早期にオークションが終了してしまったんです。ところが入札者がキャンセルしたということで、わたしへ電話がかかってきたんですよ」
トラウトンは、購入予定だった資金の一部をバイクに使っていたが、とりあえずクルマを見に行くことにした。ヴォグゾールが「素敵なルックスに楽しいドライブ」と宣伝したヴィクター FBの魅力には、対抗できなかったらしい。
結果として彼が入手したクルマは、デラックス仕様。レザーに光沢感のあるカーペット、ヒーター、フロントガラスのウオッシャーという、その頃としては充実した装備が与えられている。
「オーナーになれたことを、満足しています。運転がとても楽しいんですよ」。とトラウトンが頬を緩ませる。
「運転席からの視認性は、現代のどんなクルマより優れています。テキスタイルで仕立てられた2021年のインテリアより、ヴィクターのレザー張りのインテリアは遥かに居心地が良いと思います」
「最高速度は128km/hしか出ませんが、80km/hから110km/hくらいでの滑らかさには驚かざるを得ません。コラムシフトですが、3速MTの変速はとても快調。コラムMTは珍しいので、盗難の予防にもなりそうですよね」