ヒルマン・ミンクスとシンガー・ヴォーグ 1960年代の英国乗用車 6台を比較 中編
公開 : 2022.01.15 07:06
1960年代、英国で普及の進む高速道路を快走した6台のサルーン。英国編集部が、かつての普通の乗用車をご紹介します。
もくじ
ーツートーンのヒルマン・スーパー・ミンクス
ーラグジュアリーな移動手段としての価値
ーミンクスの兄弟、シンガー・ヴォーグ
ー90km/hくらいが1番調子良い
ースーパー・ミンクスとシンガー・ヴォーグのスペック
ツートーンのヒルマン・スーパー・ミンクス
1961年に発売されたヴォグゾール・ヴィクター FBにとって最大のライバルモデルとなったのが、1.6Lエンジンを搭載したヒルマン・スーパー・ミンクス。パワフルで活気に溢れた1.6Lエンジンを搭載した、高速道路時代に対応したコンパクトサルーンだ。
カンパニーカーとして、約束場所へ予定時間より一足先に到着できる動的能力に、取引先の営業マンも強く興味を抱いたことだろう。1960年代でも、速さは仕事の大切な要素だった。
ヒルマン・ブランドを傘下に収めていたルーツ・グループは、当初ミンクス・シリーズ3の後継モデルとして設計していた。だがシリーズ3と併売されるカタチでスーパー・ミンクスの名が与えられ、1961年10月からディーラーに並んでいる。
グレン・ブラッケンリッジ氏が最近購入したという、エメラルド・グリーンとホワイトのツートーンが美しい1962年式は、スーパー・ミンクス・シリーズ1の代表的な仕様にある。ブレーキは4本ともドラムで、フロントにもベンチシートが与えられている。
鮮やかなツートーンの塗装は、初代オーナーが購入時に選択したオプション。スーパー・ミンクスのアメリカンなルックスを、一層強調している。
ラグジュアリーな移動手段としての価値
「このスーパー・ミンクス手に入れたのは4年前。走行距離は1万4000km足らずでしたが、メカニズムや電気系統、インテリアにはかなりの作業を投じています。普段乗れるように信頼性を高めるため、1年近くを費やしました」
そう説明するブラッケンリッジだが、このヒルマンの特長の1つが、手の掛かったウッド張りのダッシュボードだという。「ディーラー・オプションで、現在はほとんど残っている例がありません」
このスーパー・ミンクスは日常的に使えるように、現代的な部品も選ばれている。同じルーツグ・ループ傘下にあったサンビームの2ドアモデル、レイピア譲りのオーバドライブにハロゲン・ヘッドライト、熱線入りリアガラスなど。
「できるだけオリジナル状態を保とうとは考えています。でも適切なアップグレードで、ドライビング体験をより良いものにしています」。と話すブラッケンリッジは、エンジンも載せ替えたらしい。
シリーズ1の本来のエンジンは1.6L直列4気筒だが、1965年のシリーズ4用1725ccユニットがボンネットに収まっている。「同乗者と会話を楽しみながら、100km/hくらいでも楽に巡航走行できますよ」
ラグジュアリーな移動手段として、最高の価値を提供すると主張していた1960年代のヒルマン。彼のスーパー・ミンクスは、その価値を現代でも味わわせてくれる。