ヒルマン・ミンクスとシンガー・ヴォーグ 1960年代の英国乗用車 6台を比較 中編

公開 : 2022.01.15 07:06

ミンクスの兄弟、シンガー・ヴォーグ

1961年にルーツ・グループの上級モデルとして発売された、ヒルマン・スーパー・ミンクス。その兄弟モデルとして下位に位置していたのが、同じグループ内のシンガー社から売られていたヴォーグだった。

エッジの効いたルーフラインやリアフェンダーのラインをまとい、シリーズ3のシンガー・ヴォーグが登場したのは1964年。アルミ製ヘッドがエンジンへ与えられ、適度なパワーアップも果たしている。

シンガー・ヴォーグ・シリーズ3(1961〜1966年/英国仕様)
シンガー・ヴォーグ・シリーズ3(1961〜1966年/英国仕様)

ルーツ・グループは、「高品質な製造と圧倒的に優れた価値」を備えるモデルだと主張した。言葉通りとはいえないかもしれないが、保守的な構成ながら、当時なりの魅力も持ち合わせていることは確かだ。

見事なダークグリーン・メタリックの艶を残す、1965年式シンガー・ヴォーグ・シリーズ3のオーナーが、ロブ・モス氏。「10年前にイーベイで実車を見ずに購入したんです。でも、届いてみたらがっかり」

「車内には塗料の溶剤の匂いが残っていて、フェンダーまわりはパテだらけ。サイドシルはグラスファイバーで補修してあり、エンジンにはオーバーヒートの痕跡がありました」。順調な出会いではなかったようだ。

90km/hくらいが1番調子良い

落胆したモスは別のヴォーグを探すことにし、その間の半年ほど残念なヴォーグはワークショップ前の敷地に放置された。ところが代わりのクルマは見つからなかった。仕方なくモスは、1万ポンドを投じたレストアを決めたという。

「シャシーは大々的に溶接で直しています。フェンダーパネルは前後ともに新品で、カーペットやドア周辺のゴム類も新しく交換。エンジンもリビルドしました」

シンガー・ヴォーグ・シリーズ3(1961〜1966年/英国仕様)
シンガー・ヴォーグ・シリーズ3(1961〜1966年/英国仕様)

その仕上がりは素晴らしい。完成してからというもの、信頼性にも不安はないという。「いい感じで維持できていると思います。1600ccのエンジンは活気に欠けるものの、90km/hくらいが1番調子良く走れるようですね」

確かに1965年後半から登場した、シリーズ4の1725cc 4気筒エンジンの方がよりパワフルではある。1966年には、ヴォーグとスーパー・ミンクスへルーツ・グループの新しいアロー・ユニットが搭載されている。

ところがシンガー・ヴォーグは、その1966年をもって製造を終了。休日の朝に若々しく走るミンクスの兄弟の姿を見ることができた期間は、とても短いものだった。

スーパー・ミンクスとシンガー・ヴォーグのスペック

ヒルマン・スーパー・ミンクス・シリーズ1(1961〜1962年/英国仕様)

英国価格:854ポンド(新車時)/7000ポンド(約106万円)以下(現在)
生産台数:−
全長:4191mm
全幅:1588mm
全高:1480mm
最高速度:138km/h
0-97km/h加速:22.2秒
燃費:8.9km/L
CO2排出量:−
車両重量:1068kg
パワートレイン:直列4気筒1592cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:62ps/4800rpm
最大トルク:11.8kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

シンガー・ヴォーグ・シリーズ3(1961〜1966年/英国仕様)
シンガー・ヴォーグ・シリーズ3(1961〜1966年/英国仕様)

シンガー・ヴォーグ・シリーズ3(1961〜1966年/英国仕様)

英国価格:844ポンド(新車時)/8000ポンド(約121万円)以下(現在)
生産台数:4万7769台
全長:4242mm
全幅:1619mm
全高:1480mm
最高速度:144km/h
0-97km/h加速:17.7秒
燃費:8.1km/L
CO2排出量:−
車両重量:1092kg
パワートレイン:直列4気筒1592cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:80ps/5000rpm
最大トルク:12.5kg-m/3500rpm
ギアボックス:4速マニュアル

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・ロバーツ

    Andrew Roberts

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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