セダン・パトカー、米の定番ゆらぐ SUV台頭 警察官「早く乗り換えたいよ」のワケ

公開 : 2021.12.29 09:45  更新 : 2022.03.25 18:48

SUVパトカーの利点を直撃取材

実際、セダン型とSUV型にはどんな違いがあるのだろうか?

世界最大の自動車アフターマーケット見本市「SEMAショウ」の会場で警察官に聞いてみることにした。

セダンやSUVのパトカーの他にピックアップも存在する。
セダンやSUVのパトカーの他にピックアップも存在する。    加藤博人

最終日に開催された「イグナイト」という屋外イベントには20台以上のパトカーが来場していた。

ちょっと暇そう? な警察官に話を聞くことに。

――今日、会場に訪れているパトカーにはSUVが多いですね。どのような利点がありますか?

「SUVはラゲッジルームが広く、コーン(パイロン)など通行規制のための機材を搭載する場合も余裕だよ」

「荷物の出し入れもしやすく、使いやすい高さで腰に負担が少ないんだ」

「車内でパソコンを使う際にも室内高が高いSUVは使いやすい。新型エクスプローラーはパソコンが内蔵されているからパソコンを載せるためのステーやアームがない分、室内を有効に使える」

「とにかく室内が広くて使い勝手がいいね」

――セダン型と比べていかがでしょうか?

「セダン型はとにかく燃費が悪くて室内も狭く、設計が古いから仕方ないけど使い勝手もいまいちだった」

「環境のことを考えても燃費が良いクルマをパトカーとして使うのがいいと思うよ」

――それでもまだセダン型が使われているのですね。

「そうなんだよ! 実は、パトカーを替えるには年数や距離の規定があって、それを満たすまでは乗り換えができないんだ」

「だから、燃費が悪くて使い勝手が悪いセダン型を一刻も早くSUVパトカーに入れ替えるために、今は古いセダン型を極力使っているんだ」

「早く乗り換えたいよ」

セダン・パト、続々と姿を消す

2021年はクラウン・ビクトリアの生産終了から10年が経過した年。

この間、全米の警察署からは続々と「クラウン・ビック引退」の報告がなされている。2つ紹介してみよう。

バーモント州警察のフェイスブックに紹介された、クラウン・ビクトリア退役。
バーモント州警察のフェイスブックに紹介された、クラウン・ビクトリア退役。    加藤博人

バーモント州警察(Vermont State Police)は「1つの時代の終わり……」として2018年10月31日に現役最後のクラウン・ビクトリアの写真を掲載している。

そこには「フォード・モーター・カンパニーの象徴であるクラウン・ビクトリアは、1世代にわたってアメリカの警察当局に選ばれたクルーザーでした」

「そのクラウン・ビクトリア・ポリスインターセプター(CVPI)が、2011年に生産終了となりました」

「今週、バーモント州警察が現役で使用した最後のクラウン・ビクトリア『EQ258』はオークションに出品するため、フリートサービスガレージへ最後の旅に出ます」

なお、同警察署にはVSP50周年記念の後期型と1997年モデルの2台のCVPIが保存されているそうだ。

また、カリフォルニア州では2020年9月に「カリフォルニア・ハイウェイ・パトロール」(CHP)が、クラウン・ビクトリアの完全終了を伝えている。

CHPがフェイスブックに投稿した内容によると、

「カリフォルニアハイウェイパトロールは2020年9月1日午後5時に象徴的なフォード・クラウン・ビクトリア・ポリスインターセプターを正式に引退させました」

「クラウン・ビクトリアは1984年以来、カリフォルニアの人々に最高レベルの安全性、サービス、セキュリティを提供するためにカリフォルニアの道路をパトロールしてきました。CHPを支援していただきありがとうございます」

全米各地に配備されて1984年から活躍してきた「フォード・クラウン・ビクトリア・インターセプター」は、日本で言うところの17クラウン(S170系トヨタ・クラウン)のような存在だろうか。

日米を代表するパトカーは偶然にも同じ「クラウン」が車名に入っており、日本のクラウンも2018年に発売された現行クラウンで生産終了を発表している。

とはいえ、警察向けの車両としては当面の間、生産が続くとされているので、クラウンパトカーがSUVに代わることは今のところなさそうである。

記事に関わった人々

  • 加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事