“カローラらしい価格”だと、どんなSUVになるのか? カローラ・クロスのハイブリッド車試乗

公開 : 2021.12.29 17:45

最新ではないけれど、どんな感じ?

旧世代と言っては語弊があるが、現在展開されているトヨタ車のハイブリッドシステムでは古参。

基本的には現行プリウスと同様のシステムだが、ダイナミックフォースエンジン(DFE)導入の最新仕様と比較すると古臭く思えるのも仕方ない。

「一世代前の印象は拭えないが、それでも同クラスのハイブリッド車を実用燃費と動力性能でリードする」と筆者。
「一世代前の印象は拭えないが、それでも同クラスのハイブリッド車を実用燃費と動力性能でリードする」と筆者。    前田惠介

もちろん、乗って悪くなければそれでいい。

ハイブリッドをリードしてきたプリウス由来のパワートレイン。悪いわけもなく、即応性高く、それでいて過敏な反応を抑えたドライブフィール。

巡航時の速度コントロールも容易であり、滑らかな運転と馴染みがいい。トヨタのハイブリッド車を乗り継いできたユーザーならば尚更だ。

DFE採用の最新システムに比べると、負荷変動に対するエンジン回転数の変化が大きめなことや踏み増し時の初期加速のキレの甘さを感じる。

ガソリン車のDFE車とそれ以前のエンジン車の違いほどではないが、力感・洗練感で一世代前の印象は拭えないが、それでも同クラスのハイブリッド車を実用燃費と動力性能でリードするのは間違いなく、市街地から長距離まで柔軟にこなせる。

リアのサスペンション形式

これまでのGA-CプラットフォームのFF/4WDともにリアサスにダブルウィッシュボーンを採用しているが、カローラ・クロスのFF車はリアサスにトーションビームを採用。

トーションビームは軽量かつスペース効率に優れているが、ロール時のジオメトリーや横応力の問題から乗り心地と操安性の両立ではダブルウィッシュボーンよりポテンシャルが低い。

カローラ・クロスZの後席内装。リアシートは、2段階のリクライニングを備える。Z(ハイブリッド車)は、後席の乗員向けに充電用のUSB端子を2口用意。
カローラ・クロスZの後席内装。リアシートは、2段階のリクライニングを備える。Z(ハイブリッド車)は、後席の乗員向けに充電用のUSB端子を2口用意。    前田惠介

つまり、他のカローラシリーズに対してFF車のサスがグレードダウンした。

試乗してみると、車軸周りを揺するような振動や段差乗り越え時の突き上げ感でトーションビームを意識。

グレードダウンした感は否めない。しかし、その差は予想よりも小さかった。

ロール軸は目立って前下がりでもなく、リアサスの沈み込みも感じられる。

伸び/縮みともにトーションビームにしては長いストロークを使い、乗り心地や挙動の繋がりをよくしている。

操縦感覚は多少のルーズさを感じるが高速コーナリングでも安心感がある。

細かな質感を云々しなければ操安性と乗り心地の両立点が高く、穏やかなドライブを楽しみたいと考えるユーザーにはまとまりのいいフットワークである。

「買い」か?

カローラ・クロスの開発コンセプトの1つに「カローラらしい価格」がある。

FF中心の車種展開やFF車のリアサス設定なども費用対効果重視の選択と考えていいだろう。

カローラ・クロスZ(ハイブリッド車/FF:プラチナホワイトパールマイカ)
カローラ・クロスZ(ハイブリッド車/FF:プラチナホワイトパールマイカ)    前田惠介

結果、グレードによって異なるもののハイブリッド車ではカローラ・ツーリングとの実質的な価格差は約10万円である。

カローラシリーズそのものがグレードアップし、プレミアムコンパクトとなったため、目立って買い得とは思えないものの、キャビンユーティリティの差異を考慮すれば納得できる価格設定だ。

ちなみに同様のコンセプトで開発されたキックスも同等価格であり、車格差分だけカローラ・クロスのほうがお値打ち価格と言える。

開放的なキャビンに広い荷室。ファミリー&レジャー用途に適した走行性能。荒れていないラフロードくらいなら苦にならない悪路性能。

カローラ・クロスの特徴は実用車としてのアドバンテージにあり、その点でコスパに優れる。

SUVの本筋狙いのユーザーには中途半端に見えるが、実用性で図ればカローラシリーズを代表するモデルなのだ。生活用途とレジャー用途の高水準でのバランスを求めるユーザーに勧められるモデルである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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