【詳細データテスト】ベントレー・コンチネンタルGT 高級高速クーペの傑作 本格スポーツではない
公開 : 2022.01.01 20:25 更新 : 2022.03.15 03:57
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
当然というべきか、プラットフォームは標準モデルと同じフォルクスワーゲングループのMSBを使用するGTスピード。アダプティブダンパーを備えた3チャンバー式エアサスペンションや8速DCT、電子制御アクティブ4WDシステムなどもキャリーオーバーしている。ただし、制御用のソフトウェアは再調整され、よりスポーティな性格づけがなされている。
そのほか、通常のGTではオプションになるベントレーダイナミックライド、すなわち48V電源を用いるアクティブスタビライザーは標準装備化。もちろん、これもGTスピード専用チューンが施されている。
このスタビライザーには、標準仕様以上に高度な作動が求められる。というのもGTスピードには、フライングスパーで採用済みの四輪操舵システムが搭載され、これとの協調制御が必要になるからだ。
後輪操舵をマルチリンクサスペンションのタイロッドを動かすことで行うメカニズムは、フライングスパーと共通だ。とはいえ、そのチューニングはまったく異なっている。その目的は、逆位相操舵でホイールベース短縮と同様の効果を生み、低速での取り回しを改善するだけに止まらない。
ヨーセンターをリアアクスルから前方へ移動し、コーナリング時にシャシーのより中心寄りを旋回軸とすることを可能にするのだ。ベントレー曰く、この4WSシステムの効力は、舵角が増すほどにアグレッシブさも増すという。
そして、ベントレーがGTスピードではじめて市販車に導入したのが、トルクベクタリング機能を持つ電子制御リアデフだ。遊星ギアとひと組のクラッチを組み合わせたそれは、オープンデフとしても、左右等分固定ユニットとしても機能するだけではない。
制御ユニットが適切と判断すれば、アウト側の後輪へより多くの駆動力を分配することもできる。これにより、トラクションを改善するだけでなく、いうなればハンドリングバランスやコーナリング時のシャシーの挙動を、ドライバーのスロットル操作で調整できる幅が広がることにもつながる。
4WDシステムの前後駆動力配分は、スポーツモードでは30:70が基本だが、場合によってはもっとリア寄りにもなる。しかしクルーのエンジニアは、コーナリング中に2度3度と前後配分を変更するアクティブ制御を選択した。これにより、さまざまなトルク配分でコーナーへ進入してから後輪を安定させ、荷重や推進力、挙動を、ドライバーの気づかないうちに操作する。
エンジンはチェシャー工場製の6.0LツインターボW12を軽く改修したバージョンで、通常バージョンより24psアップの659psを発生する。91.8kg-mのトルクに変化はない。ブレーキは鋳鉄ディスクを標準装備するが、4枚で33kg軽量化でき、市販モデルでは最大サイズとなるカーボンセラミックディスクがオプション設定されている。
テスト車の実測重量は2279kgで、2018年に計測したW12クーペより16kg軽い。それでも、やはり重量級であることに違いはない。これはまさしく、ベントレーの高級車なのだ。