見た目に騙されてはいけないクルマ 35選 後編 羊の皮を被った狼たち

公開 : 2021.12.31 18:25  更新 : 2021.12.31 23:50

クライスラーC-300(1955年)

クライスラーは、オールズモビルが浴びていたスポットライトを奪い取るべく、1955年モデルとしてC-300を発表した。ヘミV8を搭載し、4バレルキャブレターとフルレースカムシャフトの組み合わせで304psを発揮するC-300は、発売当時米国で最もパワフルな市販車となった。

注文できるのはクーペのみで、価格は現在の貨幣価値で約4万ドル(約460万円)であった。クライスラーの中で2番目に高価なモデルであり、見た目もそれなりに良かったが、グリルの奥に隠された強大なパワーを周囲の人々に知らせるのは、チェッカーフラッグを模した小さなエンブレムだけであった。

クライスラーC-300
クライスラーC-300

VolksVair(1960年代)

カリフォルニアのクラウン・マニュファクチュアリング社は、1960年代に珍しいスリーパーを製造していた。空冷フォルクスワーゲンをベースに、フラット4を外し、コルベアから取り出したフラット6に置き換えたのだ。

その結果、当時の広告によれば、出力が200%アップしたという。後輪を空転させながらウィリー走行ができる、普通の外観のバスやビートルにスピード狂は喜んだことだろう。生産台数は不明で、近年は1台だけ現存しているようだ。

VolksVair
VolksVair

ポンティアック・テンペスト・ルマンGTO(1964年)

1960年代、自動車メーカーは高性能モデルにウィングやストライプ、ベントといった派手な外観を与えるものと期待されていた。ポンティアックは1964年モデルでテンペストのGTOパッケージを発表し、その流れに逆らった。

ボンネットのエアスクープ、エンブレム、独特の形状のホイールなど、美的センスにおいて他と一線を画していた。その繊細さは今では忘れ去られている。多くの個体がアフターマーケットのパーツで改造されることになったからだ。

ポンティアック・テンペスト・ルマンGTO
ポンティアック・テンペスト・ルマンGTO

ポンティアックは、329psの6.4L V8エンジンを搭載し、0-97km/h加速のタイムを7.7秒としているが、実際にはそれよりずっと速い。Car & Driver誌が1964年にこのモデルをテストした際は、4.6秒を記録している。

シェルビーGLHS(1986年)

クライスラーの欧州部門にルーツを持ち、英国ではタルボット・ホライズンとして販売されていた小型ハッチバック、ダッジ・オムニには何の刺激もなかったが、シェルビーはこれを米国史上最高クラスのホットハッチに仕立て上げることに成功した。

ターボチャージャー付き2.2L 4気筒エンジンは、0-97km/h加速を7.0秒で到達できるよう177psにチューニングされたほか、サスペンションの改良によりハンドリングが大きく改善されている。フォルクスワーゲンのGTIを上回るべく、車名は「Goes Like Hell S’more」とされたが、その名に恥じないパフォーマンスカーである。

シェルビーGLHS
シェルビーGLHS

500台が製造されたGLHSは、ベースとなったGLHよりもさらにレアだ。とはいえ、オムニであることに変わりはなく、現代のフィアット500アバルトと競り合える力を持っているとは誰も思わないだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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