ランボルギーニ・ムルシエラゴ、フェラーリ575 M、アストン マーティン・ヴァンキッシュ V12気筒乗り比べ 中編

公開 : 2022.01.22 07:06  更新 : 2022.01.22 19:49

単体で乗れば間違いなく息を呑むほど速い

ただし、ムルシエラゴの繊細なタッチには及ばない。このヴァンキッシュ Sにも施されているが、クラッチのつながるポイントがペダルストロークの手前側過ぎる。シフトレバーも不自然に重い。バランスでは、最新のトルクコンバーター式ATの方が良いだろう。

トランスミッション以外は、ニューポート・パグネルの工場を出た時のまま。フェラーリ575 Mへ対抗するべく、アップグレードされたシャシーを備えている。

アストン マーティン・ヴァンキッシュ S(2001〜2007年/英国仕様)
アストン マーティン・ヴァンキッシュ S(2001〜2007年/英国仕様)

この仕様のシャシーは、2004年からヴァンキッシュのオプションとしてスポーツダイナミック・パッケージとして提供されていた。ヴァンキッシュ Sでは、強化されたV12エンジンに合わせるように標準装備だ。

サスペンションのダンパーはアップグレードされ、スプリングもレートが高く5mm短い。ブレーキは、フロントに378mmのディスクと6ポッド・キャリパーを装備。ステアリングレシオも20%クイック化されている。

単体で乗れば間違いなく息を呑むほど速いヴァンキッシュでも、この3台では最も重さを感じる。ムルシエラゴは1650kg、575 Mは1730kgで、1割ほど重たいのだ。しかし、その車重を手懐けるシャシーが興味深い。反応が正確で乗り心地も良い。

表面変化が激しい舗装では、ホイールの重さを感じる。シャシー剛性も完璧とまではいえないが、荷重が掛かると確かなグリップ力が返ってくる。

軽快な回頭性と強力な制動力

大きなV型12気筒エンジンがフロントノーズに載っていても、回頭性は軽快。挙動も掴みやすい。ブレーキの質感も素晴らしく、制動力は強力。ペダルの踏力で加減しやすい。

ヴァンキッシュの回頭性とブレーキングを活かすことで、意欲的にコーナリングできる。徐々にアクセルペダルを踏み込み、オーバーステアを漸進的に引き出す。トラクションコントロールが、程々の遊びを許してくれる。

アストン マーティン・ヴァンキッシュ S(2001〜2007年/英国仕様)
アストン マーティン・ヴァンキッシュ S(2001〜2007年/英国仕様)

とはいえ、ヴァンキッシュ Sが最も輝くのはスーパー・グランドツアラーとして乗る時間。高速移動は安楽で、贅沢な車内は快適至極。車内空間にもゆとりがある。

シルバーストーン・サーキットのパドックより、フランス・サルテ・サーキットまでのロードトリップが向いている。カー・アイコニクス社が販売するヴァンキッシュ Sは、簡単に買い手が見つかりそうだ。

もう1台、フェラーリ575 M マラネロは、そのカー・アイコニクス社を創業したスティーブン・ガノン氏のプライベートカー。息子のダニエルと、共同オーナーだという。

1996年に550 マラネロを発売したフェラーリは、後継として2002年から2006年に575 Mを生産した。3台では1番登場年が新しいが、乗り味の違いも小さくない。シャシーのダイナミックスさではアストン マーティンに勝り、使い勝手も良い。

575のMは、550からの進化を示している。イタリア語でモディフィケートの頭文字だ。見た目としては、ヘッドライトの違いがわかりやすい。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ベン・バリー

    Ben Barry

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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