ランボルギーニ・ムルシエラゴ、フェラーリ575 M、アストン マーティン・ヴァンキッシュ V12気筒乗り比べ 後編
公開 : 2022.01.22 07:07
スーパーカーの極めつきといえるV型12気筒。内燃エンジンに未来を感じた時代の3台を、英国編集部が試乗しました。
もくじ
ー機能的な車内に3台でベストな運転姿勢
ー違いが明確なハンドリングGTCパッケージ
ー親しみやすさと安定性、自由度の高い操縦性
ー選択肢として非常に幅のあるV12の3台
ーV型12気筒の高性能モデル 3台のスペック
機能的な車内に3台でベストな運転姿勢
フェラーリ575 M マラネロの祖先に当たる550 マラネロは、1973年の365 GTB以来となる、V型12気筒エンジンのFR 2シーターモデル。ブランドとして、現代へのターニングポイントの1つとなった。
それまでのフェラーリは、ランボルギーニ・ムルシエラゴのライバルのようなミドシップ・スーパーカーへ注力していた。だが競争が一息ついた頃、同社の礎を築いたフロントエンジンのグランドツアラー復活を考えたのだ。
575 Mのボディはアルミニウム製。その内側には鋼管スペースフレームが組まれている。V12エンジンは、550の5.5Lから5.7Lへ排気量を拡大。最高出力515ps、最大トルク59.8kg-mを獲得している。
3ペダルの6速MTも選択できたが、このクルマには華奢なスティックで操作するF1マチック、オートメーテッドMTが載っている。1999年から2004年までF1連続優勝をフェラーリはシューマッハと遂げており、それを記念するプレートもあしらわれている。
インテリアも550から進化している。ブラック・レザーに包まれると驚くほどドイツ車的に見えるが、機能的。艶のある表皮には張りがあり、無駄がない。
バケットシートのシェルはカーボン製。快適な座り心地で、しっかり身体を支持してくれる。ダッシュボードの造形やクロノグラフのように精巧なタコメーター、ステアリングホイールの形状まで、寸分のスキもない。
アストン マーティン・ヴァンキッシュ Sの車内を、リラックスしたリビングのように感じさせてしまう。運転姿勢も3台では最高。座面は低く、ペダルの位置も理想的。視界も広い。
違いが明確なハンドリングGTCパッケージ
エレガントなルックスでありながら、全長は4550mmと意外に短い。並べてみると、短いホイールベースが一層際立つ。フロントのオーバーハングは長いが、俊敏な反応は見た目からも想像できる。
ところが575 Mは、たるんだ550だと、新車当時は辛口の評価を受けた。そこでフェラーリは、より積極的なドライバー向けにフィオラノ・パッケージを設定。2215ポンドとの対価として、操縦性をアップグレードした。
今回の真っ赤な575 Mへは、2004年に導入されたハンドリングGTCパッケージが組まれている。1万6450ポンドの追加で、15mm低く、フロントが33%、リアが15%硬いサスペンション・スプリングと、ザックス社製のアダプティブダンパーを装備できた。
リアのアンチロールバーは75%も引き締められ、エンツォ譲りのブレンボ社製カーボンセラミック・ブレーキも搭載。フィオラノ・パッケージと同様にECUも専用。パワーステアリングのアシスト量も弱めてある。19インチ・ホイールが足もとを飾る。
筆者は標準の575 Mをサーキットで試乗したことがあるが、ハンドリングGTCパッケージの違いは非常に明確。柔らかいリアの動きやスポンジーなブレーキペダルの感触が改められ、扱う自信や精度が高められている。公道でもその効果は明らか。
V12エンジンは、ランボルギーニほど興奮を誘うものではなく、アストン マーティンほどたくましくもない。それでも、フェラーリらしい訴求力が濃い。甲高いノイズを伴い、アクセルレスポンスは充分タイト。メカニカルな質感だ。