親しみやすさと安定性、自由度の高い操縦性

そして目を剥くほどに速い。1速と2速のギアは、ムルシエラゴヴァンキッシュ Sよりクロースしており、パドルを弾いても変化は小さい。3速へ入れると、ストロークの長いアクセルペダルを味わいながら、回転上昇も堪能できる。

低回転域でも扱いやすく、柔軟で粘り強い。4000rpmを超えるとパワーの波が1段高まり、レブリミットまで激しさを増し続ける。

オートメーテッドMTは、機械任せでは少し荒っぽくギアをつなぐが、変速の瞬間にアクセルペダルを戻せばいい。さらにスポーツ・モードのボタンを押せば一気に改善するから、不満は殆どないだろう。

このモードでは、アダプティブダンパーも引き締まる。シフトショックへも反応し、ボディを安定させようと務めてくれる。乗り心地は硬くなるけれど。

乗り比べると、575 Mが今回のなかで最もバランスが取れている。公道でパフォーマンスを展開しやすく、不安感なくハイペースで運転できる。

ブレーキペダルは踏んだ瞬間から張りを感じ、モンスター級の制動力を調整しやすい。ステアリングホイールは情報量が豊富で、重み付けも素晴らしい。ホイールベースが短く、軽量なスポーツカーのように小気味よく回頭する。

挙動は漸進的で予測が容易。優れたシャシーバランスで、オーバーステアへも持ち込みやすい。スポーツ・モードのトラクションコントロールは、カウンターステアを当てた姿勢も許容してくれる。

親しみやすさと安定性、自由度の高い操縦性が、575 Mを輝かせている。コーナーへ速く侵入しても、慌てる必要はない。

選択肢として非常に幅のあるV12の3台

大排気量のV型12気筒エンジンを搭載した3台は、いずれもが個性派。高性能モデルとして、非常に幅がある。

最もグランドツアラー的なアストン マーティン・ヴァンキッシュ Sは、見た目も音響もゴージャス。シャープな印象も持ち合わせ、洗練されたモデルとしての目標を見事に達成している。

フェラーリ575 M マラネロ(2002〜2006年/英国仕様)
フェラーリ575 M マラネロ(2002〜2006年/英国仕様)

フェラーリ575 Mは幅広い才能を備えた、楽しさの塊。現在の価格価値も非常に優秀で、ベースの575 Mなら英国では7万ポンド(約1064万円)程度で入手が可能だ。ドイツのアウトバーンを走らせれば、320km/hを超えるスピードも体験できる。

マルチなスーパーカーをお探しなら、フェラーリ575 M マラネロとなるだろう。だが、夢のコレクションとして選ぶなら、筆者は最も極端な例へ進みたい。特別な休日を、壮観なランボルギーニ・ムルシエラゴで満たしたいと思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ベン・バリー

    Ben Barry

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ランボルギーニ・ムルシエラゴ、フェラーリ575 M、アストン マーティン・ヴァンキッシュ V12気筒乗り比べの前後関係

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