ランボルギーニ・ムルシエラゴ、フェラーリ575 M、アストン マーティン・ヴァンキッシュ V12気筒乗り比べ 後編
公開 : 2022.01.22 07:07
親しみやすさと安定性、自由度の高い操縦性
そして目を剥くほどに速い。1速と2速のギアは、ムルシエラゴやヴァンキッシュ Sよりクロースしており、パドルを弾いても変化は小さい。3速へ入れると、ストロークの長いアクセルペダルを味わいながら、回転上昇も堪能できる。
低回転域でも扱いやすく、柔軟で粘り強い。4000rpmを超えるとパワーの波が1段高まり、レブリミットまで激しさを増し続ける。
オートメーテッドMTは、機械任せでは少し荒っぽくギアをつなぐが、変速の瞬間にアクセルペダルを戻せばいい。さらにスポーツ・モードのボタンを押せば一気に改善するから、不満は殆どないだろう。
このモードでは、アダプティブダンパーも引き締まる。シフトショックへも反応し、ボディを安定させようと務めてくれる。乗り心地は硬くなるけれど。
乗り比べると、575 Mが今回のなかで最もバランスが取れている。公道でパフォーマンスを展開しやすく、不安感なくハイペースで運転できる。
ブレーキペダルは踏んだ瞬間から張りを感じ、モンスター級の制動力を調整しやすい。ステアリングホイールは情報量が豊富で、重み付けも素晴らしい。ホイールベースが短く、軽量なスポーツカーのように小気味よく回頭する。
挙動は漸進的で予測が容易。優れたシャシーバランスで、オーバーステアへも持ち込みやすい。スポーツ・モードのトラクションコントロールは、カウンターステアを当てた姿勢も許容してくれる。
親しみやすさと安定性、自由度の高い操縦性が、575 Mを輝かせている。コーナーへ速く侵入しても、慌てる必要はない。
選択肢として非常に幅のあるV12の3台
大排気量のV型12気筒エンジンを搭載した3台は、いずれもが個性派。高性能モデルとして、非常に幅がある。
最もグランドツアラー的なアストン マーティン・ヴァンキッシュ Sは、見た目も音響もゴージャス。シャープな印象も持ち合わせ、洗練されたモデルとしての目標を見事に達成している。
フェラーリ575 Mは幅広い才能を備えた、楽しさの塊。現在の価格価値も非常に優秀で、ベースの575 Mなら英国では7万ポンド(約1064万円)程度で入手が可能だ。ドイツのアウトバーンを走らせれば、320km/hを超えるスピードも体験できる。
マルチなスーパーカーをお探しなら、フェラーリ575 M マラネロとなるだろう。だが、夢のコレクションとして選ぶなら、筆者は最も極端な例へ進みたい。特別な休日を、壮観なランボルギーニ・ムルシエラゴで満たしたいと思う。