ハーレーダビッドソン・ライブワイヤーへ試乗 北米の鉄の馬も電動へ

公開 : 2022.01.10 08:25

路上を飛行しているように清々しい

ハンドルとシートベースからは、脈打つようなパルス振動が伝わってくる。電気モーターが生み出しているものだという。グリップのスロットルをひねって、オンかオフかを確かめる必要はない。SR/Sにも欲しい機能だ。

クラッチやトランスミッションがない電動バイクは、大型スクーターのように乗りやすい。印象的なほど自然なスロットル・レスポンスも、近づきやすくしてくれている。

ハーレーダビッドソン・ライブワイヤー(英国仕様)
ハーレーダビッドソン・ライブワイヤー(英国仕様)

クルマでいうドライブモードに当たる、ライディングモードにはエコ、レイン、ストリート、スポーツの4種類が用意されている。エコ・モードは市街地に丁度良く、ウーバーのスクーターを引き離すのに充分なダッシュ力が得られた。

スポーツは回生ブレーキの強さが強くなり、スロットル・レスポンスも向上。流れの速い郊外の道にピッタリだ。

クラッチもギアもないハーレーは、ガソリンを燃やす従来モデルのように、生々しく豊かなスリルを味わえないのでは、とお考えかもしれない。確かに、筆者も実際にまたがる前に抱いていた疑問ではある。それは杞憂だった。

大きめにスロットルを開いた時の加速力が、そんな考えを吹き飛ばした。0-100km/h加速は3.0秒と主張され、速度変化に伴うノイズはほぼない。常に路上を飛行しているように清々しい。お決まりの表現かもしれないが、本当にそう感じる。

最先端のトラクション・コントロールも装備され、コーナーでも余計な不安なしにフルパワーを与えられる。最新のクルマへ積まれるシステム以上に、クレバーかもしれない。

電動バイクの楽しさを体験できる

車重は249kgと、BMWのアドベンチャーバイク、GSシリーズとほぼ同等。前後のバランスも良好で、挙動も予想しやすい。

高速域で進路を素早く変えるには、身体の筋力が求められる。だがシャシーが重すぎると感じることはなく、ミシュラン・スコーチャー・タイヤがふんだんなグリップ力を与えてくれる。感触も豊かだ。

ハーレーダビッドソン・ライブワイヤー(英国仕様)
ハーレーダビッドソン・ライブワイヤー(英国仕様)

気になる点といえば、やはり航続距離。ツーリング仲間は、充電の待ち時間やその頻度にヤキモキするかもしれない。ロンドンから南部のチチェスターまで片道約110kmのツーリングのあと、走行可能距離は残り12kmだった。

現実的に、一度の充電で走れる距離は120kmほど。早朝のリフレッシュや通勤には問題ないかもしれないが、ロングツーリングには適していないといえるだろう。

英国価格2万8995ポンド(約440万円)のライブワイヤーは、多くのバイクファンへ訴求するモデルではないとは思う。冒頭で触れたように、別ブランドなら電動モデルと内燃モデルを両方買える値段だ。

しかし、ハーレーダビッドソン初の電動モデルとして、設計やデザインの完成度は非常に高い。人間工学や製造品質だけでなく、電動バイクの楽しさも見事に堪能させてくれる。欲しいと思えるほどに。

ハーレーダビッドソンは、順次電動モデルのラインナップを拡大すると発表している。ライブワイヤーは、その未来の実現に大きな期待を持たせてくれた。

ハーレーダビッドソン・ライブワイヤー(英国仕様)のスペック

英国価格:2万8995ポンド(約440万円)
全長:2136mm
全幅:833mm
シート高:762mm
最高速度:185km/h
0-100km/h加速:3.0秒
航続距離:152km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:249kg
パワートレイン:電気モーター
バッテリー:15.5kWhリチウムイオン
最高出力:105ps
最大トルク:11.8kg-m
ギアボックス:−

記事に関わった人々

  • 執筆

    Move Electric UK

    Move Electric UK

    英国の純EV専門メディア
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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