100年現役? 王立空軍CH-47チヌーク、正式採用から40年 未だ衰えを知らない実用性とは
公開 : 2021.12.31 20:05
設計・デザイン
チヌークの用途を知る手がかりは、モデルコードである「HC-47」にある。RAFではチヌークをHC.Mk(現在はMk6まである)と呼び、ボーイング社のベース機とは細部の仕様にさまざまな違いがある。軍用に設計された重量物運搬用ヘリコプターだが、民間でも大量の人や機材を難所へ運び出したりすることがある。
チヌークの成功の鍵は、他の大型輸送ヘリコプターと一線を画す、2基の逆回転ローターブレードにある。シンプルなコンセプトでありながら、その構造は複雑だ。
前部と後部に3枚ずつブレードがあり、225rpmの速さでそれぞれ反対方向(前部は反時計回り)に回転し、これがチヌーク特有の音を生み出す。各ローターは決して接触しないように連結され、互いのヨーイング・モーメントを打ち消し合うため、従来のテールブームと垂直ローターは必要ない。また、高い位置に設置したパイロンに取り付けることで、機体の後方全体を貨物用に使用することができる。
後部パイロンの横には2基のターボシャフトエンジンがあり、各4168shp(軸馬力)を発生する。それぞれにトランスミッションがあり、そこからリアパイロンの前にあるコンバイニングトランスミッションにシャフトがつながっている。さらにそこから2本のシャフトでリアローター用のトランスミッションへ、7本のシャフトでフロントローター用のトランスミッションへパワーを伝える。
つまり、計5つのトランスミッションがあり、約1万5000rpmのエンジン回転をローターの穏やかな回転に変えているのだ。
アルミニウム製のチヌークは非加圧であるため、比較的ストレスが少ない。ローターを含む機体の長さは30.14m(胴体だけだと15.25m)。コックピットは前部にあり、両側にドア、下部にハッチ、後部にスロープが開いている。両側面下部の膨らみには燃料タンクがあり、3000kgのノーマル仕様と6000kgの“ファットタンク”仕様がある。
ランディングギアは非格納式で、機体の下には3つの外部フックがあり、単独または合わせて使用することができる。
「運ぶこと」に特化した機内
後部の油圧ランプから機内に一歩足を踏み入れると、そこはかなり暗く、機能的な空間が広がっている。小さな舷窓がいくつかあり、アルミ製の床には荷物を固定するためのフックと、滑り止めのついた通路がある。両サイドには、折り畳み式・取り外し可能なキャンバス地でできた座り心地の悪いシートが並んでいる。
チヌークは、2名のパイロットと1~3名のクルーに加え、55名の兵士を運ぶことができる。しかし、実践では一度に70人以上を輸送したことが知られている。
荷室は長さ9.3m、幅2.29m、高さ1.98mで、軍用車両が入るのに十分な大きさがあり、10トンの積載能力を備えている。最大24台のストレッチャーを収納できるほか、パレットの積み込みを容易にするローラーフロアーシステムを装備することも可能だ。また、負傷者を搬送する際には、衛生上の理由もあるが、体液が機体を腐食させる可能性があるため、ゴム製の医療緊急対応チーム(MERT)用マットを装着する。
結論から言うと、運ぶべきものは何でも運ぶのがチヌークだ。ロードマスターと呼ばれるクルーは、「レンジローバー、ドルや金塊のパレット、ロバなど、あらゆるものを運んだよ」と教えてくれた。
機内に積み込むだけではない。機体下部の3つのフックは、チヌークの運搬能力を超える耐荷重を誇る。前方と後方のフックはそれぞれ7711kg、同時に使うと1万433kgの耐荷重がある。中央のフックは、床面の開口ハッチ(ロードマスターがパイロットに指示を与えながら作業を監督するためのもの)の真下にあり、1万1793kgを吊り上げることができるのだ。この3つのフックで吊られた荷は、緊急時にはすべて投棄することができる。
「敵に渡さないものは吊らない」とロードマスター。
貨物室からドアを通ってコックピットへアクセスできるが、操縦席に座るには低い位置にあるスイッチパネルを越える必要がある。横に並んだ2つのシートから前方の視界は非常に良好だ。しかし、後方はそうでもないので、クルーの存在が重要である。
初期のチヌークはアナログのディスプレイとコントロール装置を搭載していたが、現在ではすべてデジタル式のグラスコックピットに改良され、昨年、RAF最後の1機がボーイング社のDAFCS(デジタル自動飛行制御システム)にアップグレードされた。右側のパイロットの後ろには、もう1つジェット燃料タービンがあるが、これはキャビンのヒーターである。