新型ランドクルーザー、「買い」なのか? 300系の魅力と判断のポイント

公開 : 2022.01.02 18:25  更新 : 2022.01.12 01:22

乗り心地とハンドリング

リアサスは、長いストローク長を確保したラテラルロッド付き4リンク・リジッドアクスル。

バネ下重量が重く、なおかつブッシュなどを衝撃吸収よく設計しなければならないため、軸規制があまくなるのが難点。車軸周りを揺するような振動やばたつきが乗り心地の質感を損ねるのだが、ランクルはそれがとても少ない。

新型トヨタ・ランドクルーザーZX(プレシャスホワイトパール)
新型トヨタランドクルーザーZX(プレシャスホワイトパール)    前田惠介

モノコック+独立懸架のオンロード志向のSUVに比べれば多少の「どたぶる」感はあるのだが、従来型から随分と減少している。

一般乗用車とは質感の異なる良質な印象というか、車軸周りに適度な緩さと収束感を持たせているのが印象的。仄かな余韻がいい意味での重量とサイズを感じさせてくれる。

緩さと収束感の妙味はハンドリングにも活かされている。

反応は早く穏やかに、微小なコントロール性よりも据わりのよさを重視した特性。

車体サイズや車重からすれば切れ味のいいほうだが、重量に振り回されているような感じがなく、修正操舵少なくラインに乗っていく。

なお、専用サスチューンを採用したGRスポーツは軸規制も含めて全体的に締まった設定だが、反応や軽快感を誇張することもなく、標準サスの特性をベースに操舵追従性・コントロール性を向上させている。高速長距離用途が多いユーザーにはけっこうウェルバランスである。

ハード以外のオフロード装備

この試乗では実力を試せなかったが、オフロード対応も万全である。

前項までで述べたオフローダーらしいシャシー設計もそうだが、ランクルのオフロード性能で見逃せないのが運転支援機能だ。

300系ランドクルーザーでトヨタ初搭載となった「アンダーフロアビュー」。
300系ランドクルーザーでトヨタ初搭載となった「アンダーフロアビュー」。    前田惠介

先代から採用していたが、新型になって機能をさらに充実させている。

4WDシステムはトルセンLSDをセンターデフに用いた副変速機付きフルタイム式。電動リアデフロックも、GRスポーツに標準、他グレードにOPで用意する。

各輪のスリップ状況を検知し、ブレーキによる空転抑制とトラコンを統合制御するマルチテレインセレクトには、路面状況に応じてオートからロック(岩場)まで6モードを設定。

モーグルや滑りやすい登坂でアクセル操作を自動化したクロールコントロールも全車標準装着。また、録画画像との組み合わせで車体周辺および車体下の路面状況を映し出すマルチテレインモニター(オフロード走行用/アンダーフロアビュー)をベーシックグレードのGX以外にOP設定。

ハードクロカンは運転操作にも気を使うが、周辺の路面確認・自車の状況を踏まえた踏破ルートの設定など、走行速度は遅くともけっこう忙しい。

それだけドライビングミスも誘発しやすい。部分的でも操作を容易にしてくれるだけでも踏破性アップ。

トライアル志向のクロカン派には邪道かもしれないが、アウトドア趣味を楽しむためのオフローダーには有り難い機能である。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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