トヨタ・ハイエース 新型(300系)はどう進化 200系と併売/気になる電動化は?

公開 : 2022.01.05 05:45

全長を伸ばせば良いというものではない

300系ハイエース日本仕様では、キャブオーバーでなく、グランエースのように着座位置が下がり、前席の空間はアルファードのような広さを感じることになるのだろうか?

ここがトヨタを悩ます点であろう。

現行はさまざまはボディサイズを用意する。
現行はさまざまはボディサイズを用意する。    トヨタ

200系ではさまざまなボディサイズがあるものの、ベースとなるVAN(バン)/2WD/標準ボディの全長4695mmで荷室長3000mmという、「働く人たちにとって標準化された」ともいえる数値を、キャブオーバーではなく実現する必要がある。

ハイエースのカタログには、荷室長3000mm(約9尺)や、荷室幅1520mm(約5尺)など、建設や工事などの部材で使う尺(しゃく)での表記があるほどだ。

解決策として、単純に全長を伸ばせばよいとはいえない。

なぜならば、自宅、会社、事業所での駐車スペースとして200系ハイエースのサイズとしてギリギリ確保しているケースも少なくないからだ。

こうした日本仕様におけるボディの構造設計の難しさを乗り越える新しい車体には、NVH(ノイズ・バイブレーション「振動」、ハーシュネス「路面からの突き上げ」)に対する大幅な改善が見込まれる。

乗用車ユーザーが、ノーマルのハイエースを空荷で乗ると、LTタイヤとクルマ全体から受けるNVHの多さに驚くだろう。

こうした「商用車だからという割り切り」が300系ハイエース日本仕様では必要なるなることが期待される。

200系との併売も? 気になる電動化

さらに気になるのは電動化だ。

国は2021年6月「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の最新版を公開した。

フィリピンなどで販売されているハイエースに追加された新機種。2.8Lディーゼル/3.5Lガソリンがラインナップされる。
フィリピンなどで販売されているハイエースに追加された新機種。2.8Lディーゼル/3.5Lガソリンがラインナップされる。    トヨタ

この中で、2035年までに乗用車新車100%電動化を提示している。

一方、商用車については、ハイエースを含む8t以下の小型車で、2030年までに新車販売で電動車20-30%を目指す。

その後、2040年までに、新車販売で電動車と合成燃料等の脱炭素燃料の利用に適した車両であわせて100%を目指すとしている。

つまり、乗用車に比べてハイエースなど小型商用車の電動化は日本国内では緩やかに進む可能性が高いといえる。

こうした時間軸を考えると、300系ハイエース日本仕様は、初期モデルでは現行のガソリンとディーゼルを改良し、マイルドハイブリッドなど導入コストが比較的安い電動化と、合成燃料の普及を同時に進める可能性があると思う。

いずれにしても、「ハイエースの故郷(製造拠点)」である、トヨタグループ関連企業の岐阜車体工業(岐阜県各務原市)では着々と300系ハイエース日本仕様の製造準備が進んでいることだろう。

300系ハイエース日本仕様、登場はいつなのか? また、300系が出ても当面は200系併売もありなのか?

今後もトヨタの動きを注視していきたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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