ジャガーF-タイプ

公開 : 2014.05.27 22:40　　更新 : 2017.05.29 18:38

■どんなクルマ?

ジャガーF-タイプ・コンバーチブルの兄弟に位置するこのクルマは、F-タイプ・クーペの中で最も安価に購入できるモデルで、更にはここ最近のわれわれのお気に入りでもある。

より高価なV6 Sと同じスーパーチャージャー過給の3ℓV6エンジンが組み合わされ、V6 Sの価格は￡60,235(892万円)、最高出力は380psであるの対して、こちらのベース・グレードのF-タイプは￡51,235(759万円)となり、340psと45.9kg-mを発揮する。

今回テストした車両には19インチのアロイ・ホイール(標準は18インチ)を装着し、さらにクルーズ・コントロールと、アップグレード版のサウンド・システムが追加されているため、価格は￡60,963(903万円)になっている。

ハード・トップとリア・エンドは巧みに処理されているため、どちらかというとF-タイプ・クーペのルックスはコンバーチブルに比べるとむしろ良くみえる。ルーフ単体のデザインがベストだとは言えないが、読者諸兄がご存知のとおり、剛性向上にも大いに寄与しているのは事実だ。

なお、コンバーチブルモデルに与えられたサスペンションはクーペ用に再度設計が見直され、(理論上当然ではあるが)乗り心地とハンドリングは更に良くなっている。

キャビンに乗り込んだ際に目に入ってくる景色は既に見慣れたものだ。ただし新たに設けられたルーフのお陰で、中は幾分小さくなたように感じる。ただしこのクルマ自体が荷物を沢山積むような類のものではないので、悪いニュースではことさらない。レイアウトは直感的で、乗っていて非常に心地よい印象だ。

なお、クーペ・モデルはトランクの容量は350ℓに拡大され、これはほとんどのオーナーにとって充分なサイズだといえるだろう。

■どんな感じ?

ひとたびエンジンに火を入れると、エグゾースト・ノートが響き渡る。V6 SやV8 Rほどのボリュームはないが、それでも喜ばしいサウンドを披露してくれるのだ。スロットル・レスポンスも申し分なく、それゆえにゼロ発進も非常にクイックである。

最初に断っておくべきではあったが、今回われわれは市街地でのテストを行っていない。テスト場所はミルブルック・プロバインディング・グラウンドと言う名のシティ・コースで、中でも高速トラックとワインディングをテスト・ルートとして利用した。したがって、ドライビング・コンディションの殆どをカバーすることと同等だと思っていただいて構わない。

このクルマのステアリングがクイックかつ正確で適度な重量感を持っているということがシティ・コースでは明らかになった。その上、迅速にシフト・アップとダウンを繰り返す8速のギア・ボックスはエンジンのパワーを引き出すには間違いなく理想的で、市街地での利用に似た条件の場合は燃費向上のために的確に高段のギアを選択してくれる。車重や車格を感じさせることはなく、際立ったのはその敏捷さであったのは言うまでもない。

ワインディングでのテストでは、￡85,000(1259万円)のV8 Rほど爆発的なエンジン・パワーを感じることはなかったが、それでもかなりの速さでコーナーからコーナーへと駆け抜けていく実力を兼ね備えている。

特筆すべきは110km/h前後の運動性能の良さで、安定性と操作性ともに高いレベルで両立されている上、電気式のスタビリティ・コントロールも過度に介入してくることはなく心から楽しみながらステアリングを切り込みアクセルを操作することができるのだ。

最も違和感を感じたのは、センター・コンソールに据えられたスイッチをフリックしてスポーツ・モードを選択したときのことである。パドル・シフトでも操作することができるのだが、機械側に任せた際にシフト・チェンジをする寸前でエンジンがもたつく傾向がある。

特に高速トラックでの走行時は、非常に洗練され快適で安定感にも優れていたため、F-タイプのエントリー・モデルの底力にただただ感動させられっぱなしだった。

ちなみに高速走行時のコンピューターは8.9km/ℓの燃費を示していた。340psのクルマにしては悪くないように思えるが、どうだろか。

■「買い」か?

もちろんと言うほかない。コンバーチブルが発表された時点でかなりのレベルの高さではあったが、クーペの奮闘によりさらに印象は底上げされたといっても差し支えないはずだ。

高速域でも速く、快適で、ドライバー側が操っているという感覚を絶やさない。筋金入りのドライバーならばスポーツ・エグゾースト・システムをオプション選択することにより、さらに痺れる音を聴くことも可能だが、そうしなくとも十二分に楽しむことができるはずだ。

(ダレン・モス)