メルセデス・ベンツCクラス vs BMW 3シリーズ vs ジャガーXF 上級サルーン乗り比べ 後編

公開 : 2022.01.16 09:47

モデルチェンジを果たした新型Cクラス。定番サルーンの訴求力を、3台との比較で英国編集部が探ります。

最も軽量という強みを持つ3シリーズ

3台ともに4気筒ディーゼルターボ・エンジンを搭載するが、トルク感では、最新のメルセデス・ベンツC 220dが最も豊か。低回転域から力強くボディを引っ張る。バランスの良さでは、BMW 320dが一枚ウワテ。車内で聞こえるノイズも小さい。

最高出力は190psと、BMWが3台では一番低い。しかし車重は1540kgと最も軽く、回転域を問わず安定したトルク感がある。4000rpmを超えても、ジャガーXF D200やC 220dより積極的に回転しようとする。やはりエンジンの会社だと思わせる。

ガンメタリックのBMW 320d Mスポーツ・プロパッケージと、ホワイトのジャガーXF D200 AWD Rダイナミク S
ガンメタリックのBMW 320d Mスポーツ・プロパッケージと、ホワイトのジャガーXF D200 AWD Rダイナミク S

この軽さは、3シリーズの明確なストロングポイント。試乗車はオプションのランフラット・タイヤを履いており、路面の凹凸やうねりを越えると硬めの乗り心地を隠さない。だがグリップ力や姿勢制御、操縦性の精度では、最もバランスに長けている。

コーナリングは、常にフラットで落ち着いている。アダプティブダンパーをコンフォート・モードにしていても、張りとしなやかさを兼ね備えた特別な質感を味わえる。

他方、C 220dの着座位置は320dより高い。それも相まって、コーナーへ侵入していくと早めの段階でボディロールが発生するように感じる。

サスペンションは、BMWより路面の不整を巧みに吸収し均してくれる。だが、高速域での鋭い入力にはさほど強くないようだ。

ツギハギの多い市街地の路面でも、Cクラスの落ち着きは乏しい。それでいて操縦性のシャープさやバランスは、3シリーズには及ばない。

一般道への親和性で勝るXF

ジャガーXF D200のシャシーは、英国郊外の一般道への親和性で勝る。BMW 3シリーズ以上に。適正なクルージングスピードなら、まるで路面から浮かんでいるように滑らかに走る。加えて、出色のハンドリングがドライバーを飽きさせない。

ステアリングホイールの重み付けは素晴らしく、情報量も豊か。アダプティブダンパーを搭載せずとも、コミュニケーション力は秀逸。オプションの19インチホイールを履いていても、その印象は変わらないようだ。

ジャガーXF D200 AWD Rダイナミク S(英国仕様)
ジャガーXF D200 AWD Rダイナミク S(英国仕様)

エグゼクティブ・サルーンに相応しいと感じさせる、優れた乗り心地と操縦性をジャガーXFは両立させている。ここまで研ぎ澄まされた例は、極めて珍しいといえる。

その反面、操縦性のバランスや、姿勢制御や動的能力という面では、320dの水準には届いていない。ハンドリング・サルーンとして、EセグメントのジャガーがDセグメントのBMWを打ち負かすのではないかと期待していたが、難しいようだ。

最終的に、ジャガーFXのボディは大きく重すぎる。2015年というX260型の登場年の古さも、隠せないのだろう。

W206型のCクラスは、フレッシュさを感じる走りながら、ドライバーへの訴求力で3シリーズやXFを凌駕することはなかった。恐らくディーゼルの220dは、メルセデス・ベンツが長年培ってきた5代目Cクラスのすべてを、完璧には表現できていないのだろう。

記事に関わった人々

  • マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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