ベントレー4 1/4リッター・ヴァンデンプラ・スポーツツアラー 金色のビンテージ 後編
公開 : 2022.01.29 07:06
綺羅びやかなゴールドに塗られた、ベントレー4 1/4リッター・スポーツツアラー。英国編集部が、貴重な1台をご紹介します。
オーナーを転々とした4 1/4リッター
1941年2月、グレートブリテン島西部に位置するアングルシー島へ住む、リチャード・ダットン・フォーショー氏がベントレー4 1/4リッター・スポーツツアラーを中古で購入。彼はもう1台、有名なヴァンデンプラ・ボディのベントレーを所有していた。
パイロットのヴィヴィアン・ヒューイット氏がオーナーだった、8リッター・レーサーだ。壮観な2台が、小さなアングルシー島に揃ったのだった。
ダットン・フォーショーは終戦までベントレーを維持し、1948年にデビッド・ブルーマー氏へ売却。さらに彼はベントレーのディーラー、ジャック・バークレイ社が所有していた、ジェームズ・ヤング・ボディの4 1/4リッターと交換した。
ジャック・バークレイ社はオープンツアラーの買い手に目星をつけていたようだ。その1人が、映画俳優のヒュー・シンクレア氏。夏の間だけオーナーとなったが、ウィリアム・ライリー氏を経て、百貨店オーナーのジョン・ウォルシュ氏の元へ渡った。
続いて2年後、劇作家で政治家のウィリアム・ダグラス・ホーム氏が購入。だがクリスマス前に長男が誕生すると、手放すことを決める。「妻は、赤ちゃんとスコットランド旅行するのに、オープンのベントレーは適さないと話したんです」
そこで、ベントレー愛好家のジョニー・グリーン氏が買い手として名乗り出る。彼は欧州を巡る旅行用のクルマを探していた。8リッターも考えたが、4m近いホイールベースは実用性に欠けると判断したようだ。
唯一の候補が、ダービー・ベントレー。友人との相談で、軽量なコーチワーク・ボディを載せた、オーバードライブ付きの4 1/4リッターに条件を絞っていた。
半年をかけた高水準なレストア
この仕様は6台しか作られていないことも知っていたが、ジャック・バークレイ社のつてで、偶然にも理想のオープンツアラーと巡り合うことができた。2人はランチをともにし、明るいゴールド、ハニーサックルに塗られたオープンツアラーが引き渡された。
かわりに、グリーンは所有していたベントレー3リッターをアメリカ人へ手放すが、新しい友人を作ることにつながった。北米大陸横断という冒険へ挑む、きっかけにもなった。
グリーンがハニーサックルのオープンツアラーを購入した時点で、走行距離は約11万2000km。真っ先に彼は半年をかけて、求める高い水準へ仕立て直すことにした。
シャシーのオーバーホールは、マッケンジー氏という専門家へ依頼。それ以外は、ロンドンの北、ハムステッドに拠点を置くサマートン・モーターズ社によって見事な修復が施された。
仕上がりは極めて高水準で、1967年にはベントレー・ドライバーズ・クラブ(BDC)のコンクールデレガンス・イベントで総合優勝。ダービー・ベントレーのベストとして、別のイベントでも選出されている。
1968年の英国グランプリでは、レース前のサーキットツアー・イベントへ招待を受けた。レーシングドライバーのピアス・カレッジ氏が4 1/4リッター・オープンツアラーの助手席に座り、シルバーストーン・サーキットで観衆の声援に応えた。
グリーン自身も、ベントレーの運転を楽しんだ。英国だけでなく欧州を巡る自動車旅行にも、しばしば出かけた。BDC主催のラリー・イベントにも参戦するほど。