ソニー、クロスオーバーSUV型EV初公開 「ソニーモビリティ」今後どうなる?

公開 : 2022.01.09 05:45

単なるEVでは意味がない……

ソニーモビリティを設立したからといって、一気にB2C(ビジネス・トゥ・コンシューマ:消費者向け事業)を優先しているとは思えない。

ソニーモビリティの基本路線はB2Bであろう。

ソニーモビリティ「VISION-S 02」
ソニーモビリティ「VISION-S 02」    ソニー

なぜならば、会見で吉田会長兼社長は、VISION-S 01と同02は、ソニーの既存事業と、ソニーが現在着手しているさまざまな新技術を受け止める基盤になると発言しているからだ。 

そのうえで、B2Cの可能性についても含みを持たせた会見内容だった。

背景には、グローバルでの急激なEVシフトのトレンドがある。

では、ここからは筆者としてB2C型ソニーモビリティの行方を推測してみたい。

一般的な自動車産業の事業体系として、順に考える。

まず、商品企画についてはソニーモビリティがおこなう。その際、最も重要な課題は、明確な出口戦略だろう。

ソニーらしい新しい市場のニーズを創出することをも視野に入れた、綿密に事業戦略を練る必要がある。

この時点でソニーEV事業の勝敗は9割がた決まると思う。

つまり、トヨタテスラメルセデス・ベンツボルボ、また中国の各種ベンチャーなどと同じような発想の、単なるEVを商品企画するのでは、ソニーがB2C型モビリティ事業に参入する意味がない。

商品企画および事業戦略の実行計画が固まれば、ハードウエアの部材はソニーの既存パートナーなどと組む手はいろいろあろう。

ライバルはアップルに?

では、製造をどうするか?

自社工場という発想はゼロではないだろうが、世界各地で現在、自動車メーカーや自動車部品メーカーがEV専用ラインの建設を進めている状況であることを考えると、ソニーとしてはこうした企業に生産を委託をする可能性が高いと思う。

ソニーモビリティ「VISION-S 01」
ソニーモビリティ「VISION-S 01」    ソニー

キモとなるのは、販売、修繕、多次市場(中古車/中古車リメイク/部材リユース/部材リサイクル)といった領域だが、製造委託企業と連携するのが妥当だろう。

そのうえで、ソニーEVショップを展開するか?

こうした仮想案を基に、EVや自動運転に関する市場動向と、アップルやグーグルの親会社のアルファベットなどIT系企業のモビリティ事業の進捗など、ソニーは多方面から事業の持続性を検証することになろう。

そのアップルだが、EVや自動運転開発をおこなう「プロジェクト・タイタン」が本当に量産事業となるのか、アップル社内での検証が何度もおこなわれているとの報道がある。一部では2025年の量産化といったうわさもある。

ソニーとしても、やはりアップルの動きが気になるところだろう。

見方を変えると、アップルEV事業GOサインの可能性高いと見たソニーが、ある種の対抗策としてソニーモビリティという形態を発表したという推理も成り立つのではないか。

いずれにしても、ソニーの今後の動向を注視していきたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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