DS301にSX1000、ミニ・ジェム、ユニパワーGT ミニ・ベースのクーペたち 前編
公開 : 2022.01.30 07:05
スパルタンな中毒性に虜になってしまう
1963年、新しいボディをまとったディープ・サンダーソン DS301が完成。998ccのチューニング・エンジンを搭載し、ローレンスとクリス・スペンダー氏の2人でル・マン24時間レースへの出場を叶える。
しかし、ルール上の最低タイムをクリアすることができずにリタイア。1964年、1296ccへ大きくしたエンジンでリベンジに挑んだ。
2度目のル・マンでは、ミュルザンヌ・ストレートで240km/h以上のスピードを叩き出したという。空気抵抗値を示すCd値が0.29と、空力に優れたアルミ製クーペボディの効果が大きかった。
現在、ブリティッシュ・レーシンググリーンに塗られたDS301を所有しているのが、ロビ・ベルンバーグ氏。現代のル・マン・クラシックで、彼がそんなスピードに挑戦することはないと思うが、確かに今回の4台の中では群を抜いて速い。
轟音で吹け上がる4気筒エンジンのレッドラインは8000rpm。ストレートカット・ギアが組まれたトランスミッションから、悲鳴のようなノイズが響く。メカニカル・グリップを超えるパワーが放たれる。
マシンをなだめようとしても、無駄な苦労。リアに搭載されたAシリーズ・ユニットから、不機嫌そうなノイズと振動が伝わってくる。ひたすら回り、走りたがる。スパルタンな中毒性に、思わず虜になってしまう。
加速は息を呑むほど鋭く、ロードホールディング性にも驚かされる。鼓膜を激しく揺らす音響が、もう1周走りたいとドライバーに切望させる。とはいえ、24時間もサルテ・サーキットをともにしたいとは思わないけれど。
流麗なグラスファイバー製ボディ
サンダーソンと知り合いだったという1人が、赤い1台をお持ちいただいたガイ・ラブリッジ氏。2010年にDS301を納屋で発見し、サンダーソン本人へリビルドを依頼した経験を持っている。だが、彼が現在大切にしているのは、別のモディファイド・ミニだ。
ミニ・クーパーが発表された2か月後の1962年、独自のアプローチで改造を試みたのがデビッド・オグル氏。バルクヘッドやインナーフェンダー、フロアパンなど、ベース構造を積極的に利用した。
エンジンやトランスミッション、サブフレームの位置も変更せず、フロントエンジン・フロントドライブが保たれている。完成したオグル SX1000の走りは、ベース車と大きな違いは得られていない。
しかし、キャラクターを一変するほど流麗な、グラスファイバー製ボディが与えられていた。当時の英国価格は550ポンドで、ミニ・クーパーとは違う注目を集めるモデルを探していたクルマ好きにとって、充分な訴求力を持っていた。
クラシック・ミニを生産していたBMC側も、後にSX1000へのコンバージョンを承認。正式に部品供給を得る関係をオグルは構築した。
このSX1000は、オリジナルのミニ・クーパーより装備が充実していた点も特長。スポーツ・クーペというより、豪華なグランドツアラー的な特徴が強かった。実際、グラスファイバー製ボディながら、車重も増えていた。
この続きは中編にて。