DS301にSX1000、ミニ・ジェム、ユニパワーGT ミニ・ベースのクーペたち 後編
公開 : 2022.01.30 07:07
フォードGT40を縮小したかのような印象
タイヤは確かに頼りなく見えるものの、前後の重量配分は48:52と良好。爽快な操縦性を備えている。カーペンターはサスペンションの改良と設定に大きな時間を費やしており、オリジナルのミニに通じる、跳ねるような乗り心地も楽しめる。
シフト・リンケージは、ドライバーの右側からギアボックスまで長く伸びているが、変速感が心地良い。フォードGT40を縮小したかのような、ユニパワーGTの印象を一層高めている。
アクセルペダルへ力を込めると、美しく小さなミドシップ・ミニが、75台しか作られなかったという事実に疑問を持たざるを得ない。数千台は作られても良かったのでは、と感じさせる仕上がりだ。
ユニパワーGTは、成功を掴める実力を備えていたかもしれない。しかし、会社の経営は思うように進まず、1968年にレーシングドライバーのピアーズ・ウェルド・フォレスター氏へ事業が売却された。
設備の整ったワークショップでユニパワーGT Mk2が開発され、1969年に発表。出だしは順調で、彼はイタリア・シチリア島で開催されていた公道レース、タルガ・フローリオを目指す。ところが、レース直前でクラッシュしてしまう。
その1か月後には、ル・マン24時間レースのミュルザンヌ・ストレートで225km/hを達成するが、こちらもリタイヤ。ユニパワーGT Mk2に多大な資金を投入したウェルド・フォレスターだったが、年内に生産を終了してしまった。運は味方しなかった。
クラシック・ミニへ抱いた大きな夢
高度にチューニングされたロードカーから、ル・マン24時間レース参戦マシンまで、今回は4台のモディファイド・ミニを堪能させてもらった。商業的な失敗はデザインや設計にあったのか、事業の不安定さや大きすぎた野心にあったのか、考えずにはいられない。
実際のところ、これらを生み出したクリス・ローレンス氏とデビッド・オグル氏、ジェレミー・デルマー・モーガン氏、そしてウンガーの4名は、アレック・イシゴニス氏が創造したクラシック・ミニの可能性を、見事に引き出していたと思う。
ディープ・サンダーソン DS301にオグル SX1000、ミニ・ジェム、ユニパワーGTという4台には、彼らの熱い気持ちと創造力とが、存分に表れている。現在のオーナーへも、しっかり伝わっているに違いない。
今回の4台は、いずれも確かなチューニングとモディファイを受け、これまで大切に維持されてきた。少量生産メーカーが抱いた、クラシック・ミニへの大きな夢とともに。誕生から50年以上が経過した今でも、その輝きはまったく薄れていないように感じられた。