新型 メルセデスAMG SLへ試乗 ドライバー・フォーカスの7代目 +2獲得 後編
公開 : 2022.01.15 08:26
挑発的な操作でテールスライドも楽しめる
7代目SLは、一部のAMGのように、全身の筋肉を使ってワインディングを攻めるタイプではない。デリケートな入力へ、正確に反応してくれる感度も備わる。幅広いモード設定を活用すれば、思い通りのSLへ変化してもくれる。
電動機械式パワーステアリングの重み付けは完璧で、感触が豊か。AMG GTよりセルフセンタリング性も積極的だ。操舵感は自然なバランスにあり、横Gが増大しても高いグリップ力で不安を抱かせない。
油圧制御のアンチロールバーの仕事も確実。コーナーではボディロールを抑え込み、フラットさを保つことで、意欲的な回頭をアシストしてくれる。
リアタイヤのサイズは、305/30とスーパーカー級。フルスロットルで熱狂的な加速を興じれるが、グリップ限界を破ることは難しい。
それでも、自由度の高いドライブモードを選択することで、リアタイヤの安定性を低められる。四輪駆動システムも後輪駆動状態に変化するため、挑発的な操作でテールスライドも楽しめる。セーフティネットが、しっかり裏支えした状態で。
試乗車には、オプションのカーボンセラミック・ブレーキが装備されていた。AMGの他のモデルにも共通するのだが、温度が上昇するまではペダルの感触が薄い。しかし、制動力は強大だ。
ロードノイズは、路面によって大きくなることも。洗練された印象に少々陰りを落としていた。
才色兼備の傑出したロードスターが誕生
気になったのは乗り心地。サスペンションを最も快適な設定にしても、硬さは隠しきれなかった。かつてのSLのように、優雅な乗り味のロードスターとは表現できないだろう。
橋桁の継ぎ目などを通過すると、ダンパーの素早い変化が追いつかない場面もある様子。強固なボディを通じて、不快な振動が伝わってくる。
とはいえ、落ち着きがないわけではない。荒れた路面をなだめる、充分なしなやかさは備わっている。乗り心地や快適性などの評価は、英国の公道を走ってからにしよう。
7代目へモデルチェンジを果たしたメルセデスAMG SL。専用スペースフレーム・プラットフォームの獲得で、大幅にスポーティなモデルへ生まれ変わったことは明らかだ。
加えて、20年以上ぶりに2+2のシートレイアウトが復活し、実用性も高めている。コンパクトに収納できるソフトトップで、車内空間も拡大している。荷室は小さくなったようだが。
価格は未発表ながら、6代目から大幅に上昇することは間違いなさそうだ。英国では、SL 55が10万ポンド(約1550万円)以上、SL 63が12万ポンド(約1860万円)以上が予想される。
一層ハイエンドなモデルへシフトしたといえるが、ここ数世代で最高のSLが登場したともいえる。+2の実用性に、グランドツアラーに求めるドラマ性と、ドライバーへの訴求力が見事に統合されている。傑出したロードスターの誕生だ。
メルセデスAMG SL 63 4マティック+(北米仕様)のスペック
英国価格:12万ポンド(約1860万円/予想)
全長:4705mm
全幅:1915mm
全高:1359mm
最高速度:313km/h
0-100km/h加速:3.6秒
燃費:6.5-7.0km/L
CO2排出量:268-288g/km
車両重量:1895kg
パワートレイン:V型8気筒3982ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:585ps/5500-6500rpm
最大トルク:81.4kg-m/2500-5000rpm
ギアボックス:9速オートマティック