ターボ・テクニクス・フォード・フィエスタ ST S285へ試乗 懐かしのドッカンターボ

公開 : 2022.01.24 08:25

自然で懐の深いシャシーバランスが機能

迫力の排気音は上品とはいえないかもしれないが、スコーピオン社製のシステムのおかげ。日常的な回転域では、少々不満げにゴロゴロと唸る。ターボブーストが高まる頃には痛快に吠え、3気筒らしい粒の粗いビートも覆い隠してくれる。

彼によれば、スコーピオン社のエグゾーストである必要もないという。別のメーカーのものも指定はできる。

ターボ・テクニクス・フォード・フィエスタ ST S285(英国仕様)
ターボ・テクニクス・フォードフィエスタ ST S285(英国仕様)

エンジンは暴力的なほどパワーアップしているが、それを受け止めるシャシーには限界がある。試乗させてもらったのが冬の寒い時期で、路面は軽く湿っていたこともあり、明らかにオーバーパワーだった。

コーナリング途中でターボブーストの山が来ると、ミシュラン・パイロット・スーパースポーツ・タイヤは突然トラクションを失う。狙っていたラインから外れてしまう。

アクセルペダルを少し緩めれば、フィエスタ本来の自然で懐の深いシャシーバランスが機能。アンダーステアで外へ膨らんだラインを、オーバーステア側へ引き戻してくれる。アスファルトが乾燥していくほど、ハンドリングも改善していく。

ハイペースで目的地まで走りたい程度なら、トラクション・コントロールがフィエスタ ST S285をなだめてくれる。それでも、コーナーではトルクステアが盛大。春が待ち遠しく感じられるだろう。

フォーカス STを追い回せるフィエスタ ST

ターボ・テクニクス社のS285チューニング・キットは、英国では専門ショップなどを通じて購入可能。取り付け費用は別として、3026ポンド(約47万円)で必要なパーツ一式を入手できる。

ターボ単体なら、標準のものとの交換で1140ポンド(約18万円)。同社は試していないが、クロスオーバーのフォード・プーマ STにも搭載可能だろうと話していた。

ターボ・テクニクス・フォード・フィエスタ ST S285(英国仕様)
ターボ・テクニクス・フォード・フィエスタ ST S285(英国仕様)

マウンチューン社が手掛けるM260チューニング・キットの価格は、2340ポンド(約36万円)。それより30馬力ほど大きく、キットに付随するパーツも考えれば、悪くない金額だといえる。

このチューニング・キットに価値を見出すかどうかは、フォード・フィエスタ STへ何を求めるかで変わってくる。普段使いもできる、天候を問わず楽しめるホットハッチがお望みなら、ターボ・テクニクスのS285は手に余るかもしれない。

しかし、フォーカス STを追い回せるフィエスタ STに仕立てたいというドライバーもいるはず。あるいは、サーキット・メインのフィエスタ STを望む人にとっても、S285は訴求力のある選択肢になると思う。

念のため、自動車メーカーが289psを前提に設計したモデルのように、角は丸められていない。そこが面白い部分でもあるのだが。

ターボ・テクニクス・フォード・フィエスタ ST S285(英国仕様)のスペック

英国価格:3026ポンド(約47万円/S285チューニング・キットのみ)
全長:4040mm
全幅:1735mm
全高:1476mm
最高速度:231km/h(参考/標準フィエスタ ST)
0-100km/h加速:6.5秒(参考/標準フィエスタ ST)
燃費:14.3km/L(参考/標準フィエスタ ST)
CO2排出量:158g/km(参考/標準フィエスタ ST)
車両重量:1262kg
パワートレイン:直列3気筒1497ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:289ps/5400rpm
最大トルク:42.0kg-m/3750rpm
ギアボックス:6速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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