EV開発はいばらの道? 米ボーリンジャー、乗用車開発を無期限延期 予約金返金

公開 : 2022.01.18 06:25

EVスタートアップのボーリンジャーは、商用車開発へ移行するために新型B1/B2の開発を延期しました。

B1/B2の開発は無期限延期

近年、電動オフローダーの発売計画で世界中の関心を集めている米ミシガン州のEVスタートアップ企業、ボーリンジャー(Bollinger)は、乗用車の開発を延期し、商用車に集中することになった。

同社は2019年のロサンゼルス・モーターショーで、電動SUV「B1」と電動ピックアップトラック「B2」をほぼ生産可能な状態で披露し、欧州での販売計画まで発表していた。しかし今回、創業者兼CEOのロバート・ボーリンジャーは、商用車の開発に重点を移すため、この2車種の開発を無期限に延期すると発表した。

ボーリンジャーB1
ボーリンジャーB1

メディアや顧客に宛てたメールで、ボーリンジャーはこう語っている。

「わたし達は、地球上で最高のトラックを作るという夢を持って、2015年にB1とB2の製作を開始しました」

「オフロード性能に優れた全輪駆動のB1とB2は、パワフルで革新的、そして個性的です。わたし達は、数え切れないほどのハードワークと情熱を注ぎ込んで、スタッフ全員が誇りに思えるものを作りました」

「しかし、今回、わたし達はその開発を延期し、商業用トラックと商用車へ焦点を移すことにしました」

「これは、わたし達にとって極めて重要な動きです。なぜなら、技術開発を継続し、環境に優しい未来に真の影響を与えることが可能になるからです」

同社はデビュー以来、10万ポンド(約1560万円)のB1/B2発売に関して具体的な発表を行っておらず、2021年に2度目のロサンゼルス・モーターショーに登場したものの、初期のデポジットが一部返金されたと報じられていた。

現在は、ボーリンジャーが「B1およびB2プログラムを再開できる」状態になるまで、残っているデポジットも払い戻されることになっている。

商用プロトタイプは3月登場?

AUTOCARが2019年に販売責任者のチェット・パーソンズに話を聞いたとき、当時2021年に着手する予定だった初年度の生産台数1000~1250台のうち、半分以上が販売されていることを教えてくれた。

B1/B2は、リビアンR1SやR1T、テスラ・サイバートラック、GMCの新型ハマーEVに並ぶ電動オフローダーとして期待を集めたが、ボーリンジャーは製造のパートナー企業を公開せず、リビアンのように既存メーカーからの投資も得ていなかった。

フロントから荷台まで、ボディを貫通する「パス・スルー」機構など珍しい機能で注目を集めた。
フロントから荷台まで、ボディを貫通する「パス・スルー」機構など珍しい機能で注目を集めた。

今後、同社が開発に専念するという商用車は、クラス3からクラス6までのトラックで、基本的にはB1/B2のアーキテクチャーを応用して、大型ピックアップトラックと小型トラックを展開することになる。

B1/B2はクラス3に相当するサイズだが、フォーブス誌によると商用車は異なる市場をターゲットにしているため、これとはまったく別タイプのモデルとなり、最初の試作車が3月に公開される可能性があるという。

しかし、ボーリンジャーは、キャビンから荷台まで貫通するユニークな「パス・スルー」機構を引き続き採用するとともに、さまざまなサイズのバッテリーも用意するとのことである。

乗用車の最高出力623ps、最大トルク92kg-mのデュアルモーター・ドライブトレインが商用車に引き継がれるかどうかは不明だが、2359kgの積載量と3402kgの牽引力は商用車ユーザーにとっては間違いなく訴求力のあるものであろう。

ボーリンジャーはフォーブス誌の取材に対し、B1とB2は「規模の経済をもたらす商用プラットフォームの販売に成功」し、そのバッテリー技術が一般に使用できることが確認されたときに戻ってくると語った。

同社によると、B1/B2のシャシーを購入し、顧客のニーズに最適な車両に改造できるという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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