フレイザー・ナッシュ-BMW 326 当時のベスト・サルーン 80年のサバイバー 後編

公開 : 2022.02.06 07:06  更新 : 2022.08.08 07:16

想像以上に活発に発進し停止する

1970年代初頭に326のボディを磨き始めたクリフォード・タトル氏は、1990年代初頭まで状態を維持。ブリストルの南東、ブリスリントンの街にガレージを構える、テッド・チック氏へ売却している。

惜しくもチックは2020年にこの世を去るが、1960年代初頭から自動車整備に関わっており、フレイザー・ナッシュ-BMW 326にも興味を持っていた。BMW 326と328、327をかけ合わせた、ブリストル400のレストアを仕上げた経験も持っていた。

フレイザー・ナッシュ-BMW 326(1937〜1940年/英国仕様)
フレイザー・ナッシュ-BMW 326(1937〜1940年/英国仕様)

彼は326のエンジンをリビルドし、きれいな状態で乾燥したガレージに保管していた。1950年代の所有歴を明らかにしようと時間を割いてはいたが、運転は自宅の周辺を軽く流す程度だったという。

実際、チックが326を所有していることすら知る人は少なかったほど。現在は、ブリストル・モデルを専門に扱うSLJ.ハケット社を通じて、彼の遺族が次のオーナーを探している。

ボディの塗装以外、大きなレストアを経ていない80年前のクルマだということを考えれば、驚くほど状態は良い。メッキにも輝きが残っている。

SLJ.ハケット社の代表、リチャード・ハケットを説得し、326の走行写真を撮影させてもらう。想像以上に活発に発進し、停止する。変速せずとも、清々しく加速していく。

車内は広々といえる程ではないが、1930年代の基本設計ながら、1950年代のクルマのように感じさせる。1941年以来、CBT 600のナンバーが維持されてきた理由でもあるだろう。

現代まで生き抜いたサバイバー

チックのガレージで発見されたクラシックが、今後誰の手に渡るのか、まだ決まってはいない。これから新たなオーナーの手によって、エンジンとブレーキがオーバーホールされ、1970年代風のビニール製内装トリムで仕立て直されるのだろう。

ブルーのツートーン・ボディは、塗り直されるかもしれない。あるいは戦争を乗り越え、現代まで生き抜いたサバイバーとして、この少しやつれた姿のまま運転を楽しむことも理解できる。

フレイザー・ナッシュ-BMW 326(1937〜1940年/英国仕様)
フレイザー・ナッシュ-BMW 326(1937〜1940年/英国仕様)

当時のベストサルーンといえた、フレイザー・ナッシュ-BMW 326。ブリストルのコレクターが、大切にガレージへ仕舞い込むのかもしれないけれど。

フレイザー・ナッシュ-BMW 326(1937〜1940年/英国仕様)のスペック

英国価格:475ポンド(新車時)/5万ポンド(約775万円)以下(現在)
生産台数:約60台
全長:4597mm
全幅:1600mm
全高:1676mm
最高速度:125km/h
0-97km/h加速:29.0秒
燃費:8.9km/L
CO2排出量:−
車両重量:1125kg
パワートレイン:直列6気筒1971cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:50ps/3750rpm(ブリストル85A:81ps)
最大トルク:−
ギアボックス:4速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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