ベントレー・フライングスパー・ハイブリッドへ試乗 V6ツインターボのPHEV

公開 : 2022.01.23 08:25

不足ない動力性能と滑らかさ

日常的な走行条件の限り、駆動用モーターからV6エンジンへの切り替えは至ってシームレス。しかし急加速を求めると、エンジンが始動し最適なギアが選ばれるまで、ごく僅かなタイムラグがあるようだった。

ステアリングホイールのパドルを弾いてギアを選ぼうとした時にも、一瞬の遅れがある。それでもデュアルクラッチATは、トルクコンバーター並みの滑らかさを実現している。AT任せに変速させていれば、威風堂々とした加速に幸福を感じるだろう。

ベントレー・フライングスパー・ハイブリッド(北米仕様)
ベントレーフライングスパー・ハイブリッド(北米仕様)

V6エンジンは1750rpmから最大トルクを発揮し、レッドライン目掛けて一気に吹け上がる。ここぞという時の瞬発力も充分だ。

最高速度は、フライングスパー V8より33km/hほど低く設定された、284km/h。試乗したのはカリフォルニアだったが、それ以外の国でも物足りないことはないはず。実際の速さも、V8版と殆ど引けを取らない。

サウンドは聴きごたえのあるものではないが、エンジンとエグゾーストとの和音は、実際のスピード感と良く調和している。V6エンジンのPHEVと考えれば、悪くない。

試乗車が履いていたホイールは、オプションの22インチ。エアサスペンションとアダプティブダンパーの力を借り、走行中の大きな入力は巧みに処理していた。

しかし、低速域での細かな振動には対応しきれない様子。恐らく、ひと回り小さい20インチか21インチ・ホイールなら、改善するだろう。

訴求力はV8版やW12版と同等

後輪操舵システムが標準装備され、低速域での扱いやすさと、高速域での安定性や反応の良さを高めている。だがW12版へ搭載される、アクティブ・アンチロールシステムがPHEV版には備わらない。コーナリング時は、僅かにボデイが外側へ傾いていた。

また試乗車の場合は、ブレーキパッドが低速域で優しくディスクを掴むことが少し苦手だった。リアシートの要人へ知覚させないような、シームレスな停止は難しいかもしれない。細かな部分だが。

ベントレー・フライングスパー・ハイブリッド(北米仕様)
ベントレー・フライングスパー・ハイブリッド(北米仕様)

とはいえ、フライングスパー・ハイブリッドの訴求力は、V8版やW12版と同等に高い。インテリアは見事な設えだし、リムジンとしてリアシートはゆとりがあり贅沢。

試乗車に与えられていた、 オープン・ポアと呼ばれる仕上げのウッドパネルも、素晴らしいのひとことだった。現代的に見えつつ、材料の使用量を減らすことができ、環境にも優しいといえる。

車内のデジタル技術と操作性とのバランスも、タッチモニターと実際に押せるハードボタンが共有するインターフェイスで、考え抜かれている。

英国価格は試乗時点では確定していなかったものの、同等のV8版と比較して3%ほど高くなるだけとのこと。フライングスパーを検討していて、環境への配慮や税金の減額も考えているなら、ハイブリッドを選んで間違いはないだろう。

一方でベントレーらしい個性を求めるなら、フライングスパー V8の優位性は揺るがないともいえる。

ベントレー・フライングスパー・ハイブリッド(北米仕様)のスペック

英国価格:16万5000ポンド(約2557万円/予想)
全長:5316mm
全幅:1978mm
全高:1484mm
最高速度:284km/h
0-100km/h加速:4.1秒
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:−
パワートレイン:V型6気筒2894ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:14.1kWh
最高出力:543ps(システム総合)
最大トルク:76.3kg-m(システム総合)
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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