アウディRS4アバント
公開 : 2012.06.13 18:34 更新 : 2017.05.29 18:18
■どんなクルマ?
第3世代のアウディRS4は、エステート・ボディであるアバントでのカタチでのみ提供される。
そのフロント・フードの下に搭載されるパワー・ユニットは、前のRS4の414bhpから、RS5と同じ444bhpの4.2リッターV8エンジンとなった。また、前モデルとは異なり、そのエンジンに組み合わせられるギアボックスとしてマニュアルがオプションとしても用意されなくなったのも特筆すべき事実だ。アウディはマニュアルよりもSトロニック7速デュアル・クラッチ・ギアボックスの方が、最低でも27%の燃料消費を減らすのに寄与すると発表している。また、その継ぎ目のないギアシフトの結果として、新しいRS4は0-100km/h加速が0.2秒短縮され4.7秒となったとしている。もちろん、30bhpパワーが上がった結果ということもいえるかもしれないが、重さとしては85kg増えているので、パワー・ウエイト・レシオは5bhp/トンしか違わない。
デザイン的には、より大きなエア・インレットをもったフロント・エンド、広げられたホイールアーチ、拡大されたサイドシル、そしてオーバルのエグゾースト・アウトレットを持つリア・スタイルなどが特徴として見られる。
■どんな感じ?
旧いRS4をドライブしたことのある人間なら、乗った瞬間に、すべてのvorsprung(独語で先進=アウディのキャッチコピーのひとつ)がどこに行ってしまったのかと探すのではないだろうか。
新しいRS4はドライブするだけなら適度に速いクルマだ。特に、街中では異常に軽く、高速道路でも何も有利にならないバリアブル・レシオ・ダイナミック・ステアリングにオプショナル・コストを払うという間違いを犯したとしても。
エンジンは、ミッドレンジにおいてはV8エンジンはただ単純に速いだけであって、本当のライバルであるメルセデス・ベンツC63AMGのV8エンジンの幸せな感じがない。更に、ドライバーがセット可能な乗り心地切り替えスイッチは、最もソフトな側を選んでもまだ固い。
もっとも、エンジンは静かで、ギアシフトは3つのどのモードを選んでも感心するほど滑らかだ。そして、インテリアはエルゴノミック・デザインの模範ともい言えるものだった。
しかし、どこに楽しみが行ってしまったのだろうか。
旧いRS4で提供されていたエンターテイメントは、この新しいRS4で見つけ出すのが難しいのだ。同じサイズのV8エンジンながら、この新しいRS4とRS5に搭載されるものは、4000rpmのトルク・ピーク以前で活気づく。それより回転を上げていっても、そこから爆発的なパワーがでるわけではない。
同様にシャシーも、ただ固いだけという印象で、前のRS4にあったような面白さがない。しかも、スピードを上げれば楽しいのかというと、そうでもない。
■「買い」か?
新しいRS4は、少しばかり変わったクルマになってしまったようだ。アウディがこのクルマのキャラクターを変えたというのであれば、それはそれで良いのかもしれない。しかし、エンジンとシャシーのバランスが最大限にマッチしているとは思えないのだ。ドライバーはくどいアンダーステアに悩まされることになる。
もちろん、レクリエーションを目的とし、毎日モンスター・マシンと付きあおうとするのであれば、悪くはないかもしれない。
アウディRS4を、心から素晴らしいクルマと評価することはできない。せいぜい優秀なクルマというのが限度だろうか。
(ジル・ニュートン)
アウディRS4アバント
価格 | 54,925ポンド(680万円) |
最高速度 | 250km/h(オプション280km/h) |
0-100km/h加速 | 4.7秒 |
燃費 | 9.3km/l |
Co2排出量 | 249g/km |
乾燥重量 | 1795kg |
エンジン | V型8気筒4163ccガソリン |
最高出力 | 444bhp/8250rpm |
最大トルク | 43.8kg-m/4000rpm |
ギアボックス | 7速デュアル・クラッチ |