世界が緋色に染まる日 フェラーリの祭典、フィナーリ・モンディアーリに潜入 圧倒的な規模感

公開 : 2022.01.23 19:05

フェラーリが毎年開催する特別なイベントに潜入。激しいレースや貴重なコレクション展示の様子を伝えます。

1年を締めくくる跳ね馬の祭典

フェラーリが毎年開催している「フィナーリ・モンディアーリ(Finali Mondiali)」は、同社の歴史を祝うとともに1年を締めくくる華やかなものだ。昨年11月にムジェロで開催された同祭典は、招待客のみの参加となったが、筆者はそのチケットを手に入れた。

小さな世界でぬくぬくと暮らしている一部の特権階級の遊び、という決めつけは正確ではない。フェラーリを買い、レースに参加する余裕のある人たちが、自分たちの世界で遊び、満喫しているのだ。フィナーリ・モンディアーリの驚くべき規模を見れば、そのことが実感できる。

フィナーリ・モンディアーリ
フィナーリ・モンディアーリ    AUTOCAR

トスカーナの静かな丘陵地帯にあるフェラーリ所有のムジェロ・サーキットで開催された今年の祭典を覗いてみると、筆者の常識を大きく越えた次元のモータースポーツであることがわかった。この祭典は、現存する最も有名な自動車メーカーに生命を与え続ける人々のための創造物である。彼ら顧客がいなければ、跳ね馬は何年も前に草に埋もれていたであろう。

フェラーリがムジェロのグリーンバンクとグランドスタンドを現実世界に住む人々に開放しなかったのは、新型コロナウィルスの影響が続いているからにほかならない。フィナーリ・モンディアーリは、いつも大混雑。しかし今回は、フェラーリの社員と富裕層、そしてフェラーリを所有しない人でも参加できるスクーデリア・フェラーリ・クラブのメンバーに限定されている。

それでも、マラネロの最高傑作が一堂に会するムジェロは期待、興奮、畏敬の念に満ちたさわやかな雰囲気に包まれている。緋色の靄の向こうに見える商業的な冷笑を否定するのは簡単だが、なぜかその瞬間に巻き込まれずにいられない。

世界中から駆けつけたフェラーリ・ファミリー

コナ(Icona)シリーズの最新モデル、170万ポンド(約2億6000万円)のデイトナSP3が、フィレンツェではメディアに、ここムジェロでは購入希望者に公開された。599台の限定生産で、そのほとんどはフェラーリ神話にどっぷり浸かっている人々のコレクションになることだろう。その公開の翌日に、筆者はバスで到着した。

赤い巨大な建造物が、パドックに富裕層向けのテーマパークのような雰囲気を醸し出している。メインスタンドに向かうと、スタート/フィニッシュ地点とムジェロのバックセクションが一望できる。まずは、ワンメイクレースのフェラーリ・チャレンジを鑑賞する。

フィナーリ・モンディアーリ
フィナーリ・モンディアーリ    AUTOCAR

フェラーリ・チャレンジは、チームに投資でもしていなければ、普段から気にとめることはあまりないだろう。しかし、そのスケールの大きさには目を見張るものがある。欧州、北米、アジア太平洋、英国と地域ごとにシリーズが展開され、ここフィナーリ・モンディアーリでは、そのすべてが一堂に会する。

初日には、デンマークのミシェル・ガッティングが女性として初めて優勝するという、ちょっとした歴史的な出来事もあった。ちなみに、フィンランドのルカ・ヌルミは、トロフェオ・ピレリでフェラーリ最年少の「ワールドチャンピオン」となった。一方、エルンスト・キルヒマイヤーはコッパ・シェル・シリーズで、前日に獲得した欧州の王座に加えてワールドタイトルを手にし、ダブルタイトルを達成した。

レースは活気に満ちているが、ムジェロの昔ながらのグラベルに埋もれたドライバーのために、セーフティカーが何度も導入された。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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