世界が緋色に染まる日 フェラーリの祭典、フィナーリ・モンディアーリに潜入 圧倒的な規模感

公開 : 2022.01.23 19:05

取り戻しつつあるレースへの熱意

もっと興味深いのは、レース終了後に行われるフェラーリ・ショーの方だ。カルロス・サインツJr.とシャルル・ルクレールが初開催のカタールGPで7位入賞を果たした日には、F1におけるフェラーリの無気力感を無視することはできないだろう。

スクーデリア・フェラーリにとっては奇妙なシーズンだった。取材当時、スクーデリアは残り2戦を前に、コンストラクターズ・ランキングでマクラーレンを抑えて3位に返り咲いたのである。しかし、優勝の気配はなく、メルセデスAMGやレッドブル・ホンダとの差は歴然としており、特にルクレールは彼のポテンシャルをはるかに下回るマシンで無駄な走りを続けている。

フィナーリ・モンディアーリ
フィナーリ・モンディアーリ    AUTOCAR

F1では祝うべきことは何もないが、フェラーリはGT耐久レーススポーツカーレースで記念すべき成功を収めることができた。ファクトリーチームのAFコルセは、ル・マン24時間レースと世界耐久選手権でGTE Pro/Amの両クラスを制覇し、ダブルタイトルを達成したのである。

また、GT3マシンで戦うGTワールド・チャレンジ・ヨーロッパでは、アレッサンドロ・ピエール・グイディ、ニクラス・ニールセン、コム・レドガーが優勝し、スパ24時間レースではフェラーリにとって2004年以来の優勝を飾ったほか、レッドブルカラーの488でDTMを戦った若きリアム・ローソンは、最終戦でタイトル争いから脱落したものの、際立ったスターとなった。

2023年にル・マン・ハイパーカーで耐久レースのトップクラスに復帰するマラネロは、モータースポーツへの強い愛着をしっかりと取り戻している。

AFコルセの表彰式 ジェームス・カラドも

英国のレーシング・ドライバー、ジェームス・カラドは2014年からAFコルセでレースをしており、今回のムジェロでは2度目のル・マン優勝とWECタイトル獲得にふさわしい賞賛を浴びていた。

2連戦となったバーレーンでは、ポルシェやFIAとの複雑で不透明なバランス・オブ・パフォーマンス(性能調整)論争、そしてタイトルを決定づけるチームメイトのピア・グイディと911 RSRに乗るミカエル・クリステンセンの接触があった。

フィナーリ・モンディアーリ
フィナーリ・モンディアーリ    AUTOCAR

こうしたごたごたを経て、AFコルセのタイトルが確定したのは最終戦の数日後だったため、ムジェロはカラドにとってチームとともに祝う最初の機会となった。パドックに特設された巨大ハンガーでの表彰式の翌日、彼に話を聞くと、少しばかり疲れているように見えた。

「グランドスタンドの前でショーをすると、いつも特別な気持ちになります」とカラドは言う。

「世界チャンピオンやル・マンの勝者としてここに来ることは、特別なことなのです。フェラーリに来て7年になりますが、僕にとっては第二の故郷のようなものです。488 GTEエボはいつも速いんですよ。多くのレースで勝利してきたし、フェラーリの一員であるというのは素晴らしいことだと思います」

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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