ベントレーMk VIとロールス・ロイス・トゥエンティ インドの旧車コレクター 前編
公開 : 2022.02.12 07:05
上昇中のコンクール・デレガンスへの注目度
近年はその規制が見直され、1950年以前のクラシックカーをインドへ再輸入することが可能になっている。この変更は、プーナワラのクラシックカー・コレクションにとっても追い風となった。
文化的な意味を持つクラシックカーの帰還台数は、インド全体でも増加傾向にあるそうだ。その最前線にいるのが、プーナワラだ。
「わたしが最初に購入したのは、1937年式ロールス・ロイス・ファントム III コンバーチブル。特別なクルマです。マハラジャが乗っていたもので、2023年のコンクール・デレガンスへ出展するため、今後英国へ運びたいと考えています」
インドでのコンクール・デレガンスに対する注目度も、年々上昇している。2018年のペブルビーチ・コンクール・デレガンスで開かれた、マハラジャ車両に対する記念イベントが影響を与えたようだ。
プーナワラは昨年、COVID-19の渡航制限が緩和された期間を利用し、英国へ渡航。サロンプリヴェでの展示と、ハンプトンコート・パレスで開かれたコンクール・デレガンスへコレクションを出展し、自身の存在感を示した。
彼が持ち込んだ2台は、70年ぶりに英国の土を踏んだことになったという。そのコレクションで、最も注目するべき1台といえるのが、1949年式ベントレーMk VI。第二次大戦後、本格的に量産を再開させたベントレーを象徴するモデルだ。
鮮やかなレッドとアイボリーのツートーン
Mk VIの多くには、ベントレーの工場で製造されたシャシーに、自社製のスタンダード・スチールと呼ばれた美しいボディが載せられていた。ブランドとしては、初めての生産方法だった。
同時に裕福なオーナーへ向けて、シャシーだけでの販売も続いていた。腕利きのコーチビルダーによる、特注ボディを載せられるように。このシャシー番号B-294-EYも、その1例に当たる。
ボディは、ロンドン中心部に拠点を構えていたコーチビルダー、フーパー社に依るもの。エンジンは、4257ccのFヘッドと呼ばれる直列6気筒を搭載している。
塗装は、落ち着いたカラーが選ばれることが多かった。しかし、インドの富豪が選んだ配色は、ルバーブ(ダイオウ)とカスタードという呼び名のツートーン。鮮やかなレッドとアイボリーという組み合わせが、今でも視線を集める。
華やかなベントレーをオーダーしたのは、キャプテン・ビンステッド氏。インド南部のマイソールで商業を営んでいた、マハラジャの1人だった。
プーナワラが説明する。「彼はマハラジャのために、6台や12台というまとまった数で、1度に注文していたはずです。これには、セブン・シスターズという愛称が付いていました」。まとめ買いを、マイソールする、とインドで呼ばれた時期もあったらしい。
ボディを観察すると、4枚のドアそれぞれに手書きで施された紋章に加えて、前後にもシルバーとゴールドの盾があしらわれている。ルーフの中央の盾は、マハラジャが乗車中に光で照らされたそうだ。