ベントレーMk VIとロールス・ロイス・トゥエンティ インドの旧車コレクター 後編
公開 : 2022.02.12 07:06
デモ車両として豪華装備が満載
コレクターのプーナワラは、ロールス・ロイス・ファントムの大ファンでもある。レーシングドライバーのマルコム・キャンベル卿が所有していた1933年式ファントム IIと、インド北東部のマハラジャが所有していた、1937年式ファントム IIIも所有している。
近年、究極のファントムとも呼べる、1979年式ファントム VIがコレクションへ加わったのも、自然な流れだったといえる。筆者の感覚では、ベントレーMk VIとロールス・ロイス・トゥエンティの存在感の方が強いけれど。
先出の2台が運転も楽しめるラグジュアリー・モデルだったのに対し、6.75L V8エンジンを搭載したファントムは、国家要人の移動を目的に作られたリムジン。海外からの大型客船が寄港する、岸壁が似合いそうだ。
彼が購入したファントム VIのシャシー番号は、PGH116。ロールス・ロイスのデモ車両として作られ、読書灯にヘッドレスト、カーテン、カクテルキャビネットなど、ありとあらゆる豪華装備が盛り込まれている。
「このファントムは、ブランドとしてのフラッグシップ。当時の最高スペックで仕上げてあります」
「シートは電動。ベルベットで仕立てられた後席やクッションに、エアコンも備わります。会話を聞かれたくない場合など、必要ならガラスで前後を仕切ることも可能です」
インド大統領やローマ教皇のクルマも
この水準の豪華さと快適性は、実際にリアシートへ座る人にとって必要なものだった。彼のコレクションになったファントム VIは、英国王室によってエリザベス2世の移動手段として何度も登用されてきた。1983年には、スウェーデンにも運ばれている。
女王が移動する時は、フロントフェンダーの両脇で英国王室旗がはためいた。ナンバープレートは、専用のHMQ001へ貼り直されていた。
プーナワラのコレクションは、強く興味を抱かせるものばかり。だが、まだ充分ではないらしい。インド政府が用意したロールス・ロイス・シルバークラウドや、ローマ教皇が乗っていた1964年式リンカーン・コンチネンタルなど、台数は徐々に増えている。
「最近購入したシルバークラウドは、インド大統領が以前に乗っていたクルマです。購入は、またとない機会でした。コンチネンタルの方は、過去にマザー・テレサへ贈られたクルマ。ハンセン病の慈善事業として販売されたものです」
規模を膨らませていくクラシックカー・コレクションは、プーナワラの野心の大きさをも示している。最高の状態のクルマを人々と共有しようという、心の大きさも。
いずれもが素晴らしい状態にある。アメリカ・カリフォルニアで開催されるコンテストの最高峰、ペブルビーチ・コンクール・デレガンスへの出展も視野にあるのか聞いてみた。
「遅かれ早かれ、でしょうか」。ほほえみながら、その可能性を教えてくれた。