フォードE-トランジットへ試乗 269psの純EV商用バン 航続距離315km

公開 : 2022.02.04 08:25  更新 : 2022.08.08 07:17

最も運転を楽しめるフォード社製バン

さて、実際に運転してみよう。欧州の商用車の定番といえるトランジットは、大きさを感じさせない運転のしやすさが特長といえる。それは、純EVとなってさらに伸ばされた印象を受けた。

駆動用バッテリーはシャシー下面にボルトで固定され、重心が低く安定感が増している。コイルスプリング化されたリア・サスペンションのおかげで、足取りも良好に感じた。

フォードE-トランジトット 269ps リーダーL2 H2(欧州仕様)
フォードE-トランジトット 269ps リーダーL2 H2(欧州仕様)

さらに、駆動用モーターはパワフル。エントリーグレードの183ps版でも充分に速く感じるが、269ps版なら、青信号からのスタートダッシュで周囲を驚かすこともできるだろう。

もちろん速く走ると、バッテリーも減る。ノーマル・モードでの勢いの良い走りは爽快だが、プロドライバーなら、エコ・モードを利用した運転を心がけた方が良いかもしれない。最高出力を制限し、航続距離を伸ばすことができる。

スリッパリーという、滑りやすい路面用のモードもある。パワーデリバリーとトラクション・コントロールを適切に調整することで、安全性を高めてくれる。

シャシーバランスに優れており、E-トランジットは最も運転を楽しめるフォード社製バンかもしれない。全体的な印象は淡白だが、純EVならではの静けさがもたらすものだとも思う。

エンジン音がないぶん、風切り音やロードノイズがうるさいのでは、と想像するかもしれないが、そんなことはない。試乗車は最終の試作車だったが、内装の組み立て品質は高く、キシミ音もしなかった。

価格は内燃エンジン版の2台分

回生ブレーキの制御は、他ブランドの純EVとは少々異なる。ダッシュボード中央のセレクターに用意されたLボタンを押すと、制動力が非常に強くなり、アクセルペダルの踏み加減だけで停止できるワンペダル・ドライブも可能になる。

また、ブレーキペダルをタップするように1度や2度、ポンポンと踏むことで、回生ブレーキの強さを調整できる。ステアリングホイールのパドルでの方が直感的かもしれないが、E-トランジットも機能性は良い。

フォードE-トランジトット 269ps リーダーL2 H2(欧州仕様)
フォードE-トランジトット 269ps リーダーL2 H2(欧州仕様)

E-トランジトットは利便性にも優れる。最大2.3kWまで外部給電が可能で、冷蔵庫や電動工具、照明などを利用できる。駐車時には、俯瞰で車両の周囲映像を大きなモニターに投影してくれ、経験を積んだドライバーでも重宝するはず。

車両価格は割高で、ざっくりいうと1台のE-トランジトットで2台の内燃エンジン版トランジトットを買えてしまう。だが、メルセデス・ベンツの純EV商用バン、eスプリンターより安い。走りも速く好感触だから、訴求力は高いといえるだろう。

フォードE-トランジトット 269ps リーダーL2 H2(欧州仕様)のスペック

英国価格:5万3330ポンド(約826万円)
全長:5531mm
全幅:2447mm
全高:2112mm
最高速度:136km/h(予想)
0-100km/h加速:7.0秒(予想)
航続距離:315km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:2500kg(予想)
パワートレイン:AC非同期モーター
駆動用バッテリー:68.0kWh(実容量)
最高出力:269ps
最大トルク:43.8kg-m
ギアボックス:−

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョージ・バロウ

    George Barrow

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事