アウトウニオンにサーブ、ネッカー、ランチア 1960年代の小さなファミリーカー 後編

公開 : 2022.02.13 07:07

クラス水準を遥かに超えたソリッドな品質

アウトウニオンは、フォルクスワーゲンビートルのオーナーなら理解できる、典型的なドイツ車だと思う。しかし、2ストローク・エンジンのパワー不足を、充分にカバーできていない。1960年代でも、旧時代のクルマに感じられたかもしれない。

直列3気筒2ストロークの白煙と目新しさに慣れてくると、小さなランチアが強く心に残っていることを意識する。心地良い、デザインやドライビングの印象を忘れられない。このクラスの水準を遥かに超えた、ソリッドな品質で仕上げてある。

ランチア・アッピア・シリーズ3(1953〜1963年/英国仕様)
ランチア・アッピア・シリーズ3(1953〜1963年/英国仕様)

あえて難しいことに挑もうとするランチアらしさが、小さなアッピアにも落とし込まれている。環境汚染や衝突安全性を優先することなく、ブランド・アイデンティティとしてスタイリングや技術を追求することが許された時代の、平和な小型車だ。

ランチアに限らず、1950年代のエンジニアは、時代の流行と税制を意識していれば充分といえた。歩行者がボンネットにぶつかることや、排気ガスが与える自然への影響を、強く意識する必要はなかった。

その結果、当時の英国車とは明らかに違う、今回の4台のような個性的なモデルが誕生したのだろう。家へ連れて帰るならどれにしようか、すぐに選ぶことは難しそうだ。

アウトウニオンにサーブ、ネッカー、ランチア 4台のスペック

アウトウニオン1000 S(1958〜1963年/英国仕様)

英国価格:1240ポンド(新車時)/1万2000ポンド(約186円)以下(現在)
生産台数:17万1008台
全長:4216mm
全幅:1694mm
全高:1465mm
最高速度:128km/h
0-97km/h加速:23.0秒
燃費:9.9km/L
CO2排出量:−
車両重量:895kg
パワートレイン:直列3気筒980cc自然吸気(2ストローク)
使用燃料:ガソリン
最高出力:50ps/4000rpm
最大トルク:8.4kg-m/2250rpm
ギアボックス:4速マニュアル

アウトウニオン1000 S(1958〜1963年/英国仕様)
アウトウニオン1000 S(1958〜1963年/英国仕様)

サーブ96(1960〜1967年/英国仕様)

英国価格:1058ポンド(新車時)/1万2000ポンド(約186円)以下(現在)
生産台数:54万7221台
全長:4172mm
全幅:1580mm
全高:1454mm
最高速度:144km/h
0-97km/h加速:19.0秒
燃費:9.6km/L
CO2排出量:−
車両重量:816kg
パワートレイン:直列3気筒841cc自然吸気(2ストローク)
使用燃料:ガソリン
最高出力:55ps/5000rpm
最大トルク:8.2kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

ネッカー・ヨーロッパ(フィアット1100 D/1962〜1966年/英国仕様)

英国価格:800ポンド(新車時)/5000ポンド(約77万円)以下(現在)
生産台数:40万8997台
全長:3912mm
全幅:1448mm
全高:1498mm
最高速度:128km/h
0-97km/h加速:21.0秒
燃費:10.3km/L
CO2排出量:−
車両重量:934kg
パワートレイン:直列4気筒1089cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:48ps/4800rpm
最大トルク:8.0kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

ランチア・アッピア・シリーズ3(1953〜1963年/英国仕様)

英国価格:1587ポンド(新車時)/1万2000ポンド(約186円)以下(現在)
生産台数:9万8027台
全長:4020mm
全幅:1473mm
全高:1448mm
最高速度:132km/h
0-97km/h加速:23.7秒
燃費:12.7km/L
CO2排出量:−
車両重量:920kg
パワートレイン:V型4気筒1090cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:48ps/5000rpm
最大トルク:8.6kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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