BMW i4 詳細データテスト 傑作EV 4シリーズ譲りのハンドリング おすすめは下位グレード
公開 : 2022.01.29 20:25 更新 : 2022.02.01 22:34
走り ★★★★★★★★☆☆
EVの爆発的な加速にも、最近ではすっかり慣れてしまった。それでもi4 M50のそれには、思わず息を呑む。スロットルペダルを深く踏み込めば、いついかなるときでも驚きを覚えるはずだ。
数字的に見ても、その加速性能はみごとなものだ。0−97km/hのタイムは、湿った路面でも4.1秒をマークした。64−97km/hについては1.5秒で、これはランボルギーニ・アヴェンタドールSVJのコンマ2秒落ちにすぎない。
しかし、数字以上に印象的なのが、パフォーマンスの特性だ。とくに、中回転域でそれが顕著となる。1万7000rpm回るモーターのレスポンスは瞬間的と言ってもいいもので、さらにスポーツブースト機能を使うと、544ps/81.0kg-mを最大10秒間フルに引き出せる。
パワートレインを全開にすると、リアが一瞬震え、フロントタイヤがホイールスピンするが、かなりの早さと巧みさでトラクションコントロールが抑え込み、猛然と前方へ突き進んでゆく。いま手に入る本格スーパーカーすべてと同じように、このクルマのポテンシャルをフルに試すなら、冴えた頭脳と時と場合をわきまえた判断力が必要だ。
当然ながら、加速時には内燃エンジンのようなリアルな機械音が発生しない。カムの唸りや吸気の叫び、エグゾーストの方向に代わるのが、映画音楽の大家であるハンス・ジマーの力を借りて作り上げた合成音だ。しかし、テスター陣の感想は、このサイバーなサウンドには深みがないというもの。また、かなりのスピードが出ていながら、音が盛り上がらないというのは、やる気が削がれるところもある。それはいまだ克服されていない、速いEVの弱点だ。
当然ながら、i4 M50のパフォーマンスは猛烈な側面だけではない。楽に走れるペースや正確さこそ、もっとも説得力のある性質だろう。加速はリニアでレスポンスに優れ、2点間移動をゆったり直感的に行おうとする限りは、穏やかすぎるかもしれない。
いつでもワープするようなスピードでのオーバーテイクを可能にするパフォーマンスを引き出せるが、パワートレインのストレートで、地味に力強いドライバビリティこそが、このクルマを日常使いしやすいものにしている要因だ。とはいうものの、その点でいえば、340psのi4 eドライブ40でもほぼ同じことができる。
ブレーキングについては、おおむね机上論でセッティングされている。BMWの考えは、アダプティブ回生ブレーキのプログラムによって、制動の90%は摩擦ブレーキなしに済ませるというもの。たしかに、日頃の運転がほぼブレーキを踏まずに終わるだろうことは、われわれが保証する。
ところが、緊急ブレーキについては、満足できるとはいいがたい。113km/hからの完全停止には61.4mを要し、レーンからにじり出てしまった。同じ日に同じコンディションでテストしたタイカンは、矢のようにまっすぐな軌跡で速度を落とし、54mジャストでストップした。
この違いは、タイヤによるところが大きそうだ。BMWはピレリPゼロ・エレクトを履かせていたが、ポルシェはミシュラン・パイロットスポーツ4を装着していた。