BMW i4 詳細データテスト 傑作EV 4シリーズ譲りのハンドリング おすすめは下位グレード
公開 : 2022.01.29 20:25 更新 : 2022.02.01 22:34
操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆
i4 M50の重心高は、3シリーズより34mmほど低い。そのことと、それにより高まった安定感には、乗ればきっと気づくはずだ。
もちろん、プラットフォームを共有するICEモデルに対して、数百kg増している重量も感じるに違いない。それは駐車場内のような極低速域にあっても、B級道路の完全な直線を走っていてもだ。
ほかのEVもそうであるように、フロア下にバッテリーパックを積んだことには功罪ともにある。しかしi4 M50は、それがとりわけはっきりしているクルマではないだろうか。
おそらくそれは、このクルマの基本的なフィールが、M440iグランクーペを思わせるものだからだろう。その点は、BMWの仕事ぶりがみごとだったといえる。というのも、4ドアの4シリーズはそのクラスにおけるハンドリングのベンチマークとなるクルマだからだ。
その俊敏なステアリングは、EVになってもそのままで、挙動やバランスも同質。ただし、元来のアジリティは、かなりスタビリティと置き換わっている。
フロントがコイルスプリング、リアがエアスプリングとなるアダプティブサスペンションにより、ボディコントロールも一級品。3/4シリーズのMスポーツからi4 M50へ乗り換えたなら、ピッチやロールがやや失われたことを残念に思うかもしれない。グリップレベルを知るのに役立ち、さらには、運転に自信をもたらす疾走感を得る上でも需要な要素だからだ。
ステアリングのクオリティも、バッテリー重量の影響を受けている。CLARプラットフォームに内燃エンジンを積んだBMWに比べて、活発さでは見劣りする。しかし、競合するEVに比べれば、ゆるぎない精密さやフィールを感じさせる。無論、タイカンを別にすればだが。
M50のシャシーが本領を発揮しはじめたなら、好ましい印象は続く。推進力はリアモーターのみとなるが、グリップやトラクションの限界を迎えるとフロントも始動。2基の間の調整は、ほぼシームレスだ。
ハンドリングのバランスは、リア優勢のニュートラルさを見せるが、これはBMWのxドライブと同じスタイル。しかもi4 M50は、ずっと速く楽にオーバーステアへ持ち込める。DSCをより甘いセッティングにすると、瞬間的に立ち上がるトルクとリア優勢のバランスを、エンターテインメント方面に活用できる。クルマはわずかなヨーを伴って気持ちよくコーナーを飛び出すが、加速はまだまだ激しいままだ。
M3コンペティションほどの満足感は得られないかもしれない。比べてしまうと深みという点ではやや届かず、アンダーステアも出やすい。それでも、期待したレベルの楽しみは得られる。それも、安全にだ。
後輪駆動のi4 eドライブ40については、できれば触れたくないところだ。ステアリングのギア比は遅くなり、フロントの補強ブレースも減るので、M50のように精確で運動性重視のハンドリングは得られない。ただし、合法的な速度域であればよりなめらかで、長距離も心地よく走れる。
こちらのほうがよりグリップに優れると感じられる場合も多い。いずれのモデルもパワートレインのエモーショナルさが限定的であることを考えれば、eドライブ40ではなくM50を選びたくなるモチベーションは、M340iに対するM3コンペティションの場合より弱い。