新時代のBMW BMW iX xドライブ50 Mスポーツへ試乗 523psに105.2kWh 前編

公開 : 2022.02.07 08:25

iブランドが巧みに展開されたデザイン

BMWのデザインは近年物議を呼ぶことが多いが、iXでは更に1段、進展したように思う。社の上層部も、成功の仕上がりだと考えているかもしれない。美しさではなく、個性的で人目を引くスタイリングが目指されている。写真以上に、実物は存在感が大きい。

概して、プロポーションに難があるSUVやクロスオーバー、ミニバンなどを、美しく仕上げることは非常に難しい。個性的な見た目にすることは可能でも。そこでBMWは、大胆で独創的なスタイリングを選んだのだろう。

内側から外側へデザインされたクルマだと、BMWは表現している。iXから受ける印象は様々かもしれないが、独自性は間違いなく高い。そして、強く心に残る。

縦に長いフロントグリルは依然として大きいが、プレス資料ではインテリジェンス・パネルと呼ばれている。正直なところ、筆者が受けたiXの印象は悪いものではなかった。眺める時間が長くなるほど、iブランド・イメージが巧みに展開されているとも感じた。

実のところ、BMW i3を拡大したようにも見えなくはない。幅の広いCピラーに、アンダーカバー風に処理されたボディ下部、クラムシェル・ボンネットなど、似た要素が与えられている。

i3ほどウエストラインが高くなく、ボンネットも長い。それでも、全体的なプロポーションは、さほど違わないように見える。

i3での既視感を感じるインテリア

インテリアを観察すると、i3との関係性を更に強く感じる。ステアリングホイールは、太い2本のスポークが支えている。ダッシュボードは全面が傾斜し、位置が低い。前方視界も良好だ。

車内フロアはフラットで、センターコンソールは巧妙に高い位置へ持ち上げられている。内装には天然素材やリサイクル素材が積極的に用いられている。ドアの開口部は、カーボンファイバーが露出する。

サイズは違うが、ダッシュボードから浮き上がるように据えられた、インフォテイメント用タッチモニターとメーター用モニターの存在が大きい。i3での既視感を感じるのは、筆者だけではないと思う。

10万ポンド(約1550万円)もするフラッグシップSUVの車内と、多くは売れなかった3万5000ポンド(約542万円)のシティ・ハッチバックとを比較することは、適切ではないかもしれない。でも、共通性を感じることは否めない。

まったく新しい高級モデルをデザインする際のリスクの1つは、これまでのモデルとの断絶だといえる。従来のブランド・イメージとの不一致だ。少なくとも、BMWはそのリスクを回避できている。

iXは、広々とした車内に豊かな装備を得つつ、上質ながら控え目な雰囲気も併せ持っている。高級モデルとして、長旅を快適に過ごすことができる。ボディにもインテリアにも、BMWらしさが香るといえる。その走りにも。

前置きが長くなったが、iX xドライブ50 Mスポーツを運転してみよう。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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