テスラ米中で躍進のワケ 「ブランド価値」確立にスバルとの共通点 テスラ現象、日本へ?
公開 : 2022.01.31 05:45 更新 : 2022.01.31 08:03
EVのみのテスラが軌道にのったワケ
筆者(桃田健史)は、テスラが2003年に創業して以来、定常的にテスラを詳しくアメリカ現地取材してきた。
2000年代のテスラは、将来を夢見る小さなベンチャー企業という感じで、英国ロータスの「エリーゼ」をベースに台湾製のモーターなどを組み合わせた「ロードスター」のみを販売していた。
台数が徐々に増えていき、サンフランシスコ郊外のGMオールズモビルのディーラー元店舗を再利用した本社/工場/販売ショールームを兼ねたオフィスで事業を進めていた。
テスラに、最初の風が吹いたのは、オバマ政権による環境に関する施策/グリーンニューディール政策。これに上手く乗ったことだ。
これは、アメリカ国内で次世代車を生産する企業に、アメリカ連邦政府が10年間の低利子融資をおこなうというもの。
生産拠点の選択には紆余曲折があったのだが、最終的にトヨタが「カローラ」などを生産していたサンフランシスコ郊外の工場を取得した。
テスラ初となる、白紙の状態から企画した「モデルS」が、まずは富裕層向けに徐々に売れ出し、その輪が中間所得層にも広がっていった。
それが、多くの人が手に届きやすい「モデル3」登場によって、テスラファンがコア層から「いつかはテスラ」と考えていた一般層に一気に広がった。
テスラ躍進にスバルとの共通点?
こうして、テスラは「EVのテスラ」ではなく、テスラというブランドを確立したといえる。
いうならば、スバルに近いのかもしれない。
水平対向エンジンだからスバルを買うというコア層から、ライフスタイル重視のブランドとしてスバルファンが急増したケースと、テスラのケースは、アメリカにおいては似ている。
EVというと、販売達成義務など規制ありきというメーカー目線が強かったが、テスラはEV市場で初めて、ユーザーありきというブランドとなったことが、成功の理由なのではないだろうか。
中国では、新エネルギー車に対する規制があるうえに、アメリカでのテスラブランドイメージが伝播した印象だ。
一方、日本ではまだ、テスラはEVの枠に収まっていて、ライフスタイル系としての一般的に認知されるまでに至っていない印象だ。
今後については、EV市場はメルセデス・ベンツやトヨタ、EV事業で先行してきた日産、さらに新規参入を表明したソニーなど、「EVが当たり前」の時代に入っていきそうだ。
そうなると、ますますテスラは技術面や価格のみならず、ブランド価値をどう維持しさらに成長させるのか、ブランド戦略における真価が問われることになるだろう。