初代はシリーズ最高傑作か BMW M3(E30型) 英国版中古車ガイド 

公開 : 2022.02.10 08:25

Mの歴史を切り拓いたといえる初代M3。ファンからの評価は高まる一方。英国編集部が、その魅力をご紹介します。

最高傑作のホモロゲーション・ロードカー

シリーズ作の完成度は、初作がベストか。映画でもクルマでも、しばしば話題になるテーマだと思う。それでは、BMW M3はどうだろう。最新型のクーペはM4へ名前を変え、第6世代へと進化を果たしている。

M3として初作となるE30型は、1985年に発表。AUTOCARでは1987年に初試乗しているが、「恐らく、これまでで最高傑作といえる仕上がりのホモロゲーション・ロードカーでしょう」。と絶賛している。

BMW M3(E30型/1985〜1991年/欧州仕様)
BMW M3(E30型/1985〜1991年/欧州仕様)

当時のモータースポーツのレギュレーション、グループA規定に合致させる目的で、M3は2+2というシートレイアウトの2ドアクーペで誕生した。大きく膨らんだフェンダーラインに、前後へ追加されたエアロキットが、見た目の特長だった。

何よりM3の目玉といえたのが、最高出力202psを発揮した、自然吸気の2.3L直列4気筒エンジン。1速が横に飛び出たドッグレッグ・パターンの5速MTと組み合わされ、ノーマルの3シリーズを遥かに上回る勢いで加速した。

M3は市場の強い支持を集め、発表初年度に公道用モデルの規定台数、5000台を販売。1991年の生産終了までに、さらに1万台以上を生産している。

その人気を強力に後押ししたのが、ツーリングカー・レースでの活躍。ニュルブルクリンク24時間レースでは5度、スパ24時間レースでは4度も優勝している。追ってラリー・マシンとしてもM3は投入されているが、こちらは期待ほどの成果を残していない。

初代M3の真骨頂はハンドリング

端正なルックスに不足ないパフォーマンス。確かな歴史を残してきただけあって、走りも痛快だ。遥かに大きく成長した、最新のM3とは別次元のドライビング体験が得られる。

初代M3の車重は約1200kg。直列4気筒は極めて回りたがりで、7250rpmのレッドラインへ勢いよく飛び込む。特徴的な4気筒のノイズを放ちながら。

BMW M3(E30型/1985〜1991年/欧州仕様)
BMW M3(E30型/1985〜1991年/欧州仕様)

0-97km/h加速は7.0秒、最高速度は234km/h。現代の基準でいえばハッチバックでも達成可能な数字だが、初代M3の真骨頂はハンドリングにある。

出色の後輪駆動シャシーは挙動の予測が容易で、ドライバーの操作に対し正確に反応。サスペンションの煮詰めにも不足なく、高速コーナーや不意の凹凸にもうろたえない。

ドライビングポジションも優秀で、操作系を通じたクルマとのコミュニケーションも取りやすい。真のドライバーズカーといえる内容を備えていた。

そんな初代M3は、毎年のように限定仕様が登場し、改良が重ねられている。モデル末期の方が、より速く能力も高い。

日本へは正式導入されなかったが、1989年に登場したスポーツエボリューションの場合、4気筒エンジンは2.5Lへ排気量を拡大。最高出力は241psへ引き上げられている。600台の限定モデルだった。

特に珍しい初代M3といえるが、25台しか作られなかったラヴァグリア・エディション。その希少性から、最近では6万ポンド(約930万円)から15万ポンド(約2325万円)と、非常に高い価格で取り引きされている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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