ロールス・ロイス、現行モデル全て電動化 2030年までにファントム、ゴースト、カリナンのEV仕様導入

公開 : 2022.02.02 06:25  更新 : 2022.02.02 18:49

ロールス・ロイスは、2030年までにラインナップ電動化を目指し、現行モデルの後継にEVを導入します。

現行ゴーストが最後のエンジン車に

ロールス・ロイスは、同社初のEVである「スペクター」に続き、現行のカリナン、ゴースト、ファントムのEVモデルを発表する予定だ。

2021年に117年という歴史の中で最多の販売台数を記録したロールス・ロイスのトルステン・ミュラー・オトヴェスCEOは、2030年までに完全電動化を目指す中で、各モデルをEVに置き換えることが重要であると語った。

ロールス・ロイス・ファントムEVのレンダリング
ロールス・ロイス・ファントムEVのレンダリング    AUTOCAR

ロールス・ロイスは今後数年かけて現行モデルを一新する予定で、新たなICE車は発売されない。そのため、2代目ゴーストが最後のガソリンエンジン搭載モデルとなる。

ミュラー・オトヴェスCEOは、英国政府が2030年に計画しているICE車の新車販売禁止に言及しながら、次のように話している。

「当社は法律だけでなく、世界中の若い顧客層によっても動かされており、電動化されたロールス・ロイスを積極的に求める人がますます増えています」

購入者の平均年齢は、ここ数年で43歳と急激に下がっている。ミュラー・オトヴェスCEOは、「顧客の多くは、テスラBMWなど、すでにEVを所有している」と述べ、EV充電器の操作や走行距離管理に関しても経験があると指摘する。

V12の特性をトルクフルなモーターで再現

将来のEVモデルの技術的詳細については、「ポートフォリオ全体が電動化される」ということ以外には言及しなかった。ミュラー・オトヴェスCEOは電動化について、次のように述べている。

「比較的小さな会社にとって、全車種を電動化することは大変な仕事です。しかし、必要な投資によって自動的に高価なクルマになるわけではありません。当社は『コスト主導』の価格設定ではなく、『セグメント主導』と『実質主導』の価格設定を行います」

次期ロールス・ロイス・スペクターのレンダリング
次期ロールス・ロイス・スペクターのレンダリング    AUTOCAR

パワートレインではなくポジショニングによって価格を設定するということは、電動化されても現行のガソリンエンジン車より必ずしも高価になるとは限らない、ということだろうか。

ファントムをはじめとするEVファミリーにとって優先されるのは、2030年に引退する由緒あるV12エンジンの特性を引き継ぐことだ。そのため、ミュラー・オトヴェスCEOによると、ロールス・ロイスの電動パワートレインは「非常にトルクフル」なものになり、「浮遊感、静かな動き、魔法のじゅうたんのような乗り心地、最高の品質など」を可能にするという。

ロールス・ロイスは運転を楽しむクルマへ

英AUTOCAR編集部は、ロールス・ロイスのトルステン・ミュラー・オトヴォスCEOにインタビューを行った。

――EVで利益率は維持できますか?

「1つだけはっきりしているのは、ICE車と同等の利益を生まないクルマを市場に出すことはない、ということです。それがわたしの信条です」

ロールス・ロイスのトルステン・ミュラー・オトヴォスCEO
ロールス・ロイスのトルステン・ミュラー・オトヴォスCEO

「わたしは1台あたりの貢献利益率を推進したいと思います。なぜなら、利益を上げるビジネスに携わっているからです。それがBMWグループにおけるわたしの仕事であり、台数を稼ぐことではありません」

――EV時代に向けて、BMWグループの規模をどのように活用していくのでしょうか?

「当社は、これまでと同じようにBMWグループの規模を非常に知的な方法で活用しています。ロールス・ロイスをロールス・ロイスたらしめている、我々に適したグループ・コンポーネントを使用しています」

「既存の量産車のボディをロールス・ロイスとしてリバッジ(エンブレムの付け替え)することには興味がないので、コンポーネントを使います。そうしないのは愚かなことです」

――グループの自動運転システムを統合するのでしょうか?

「自動運転は、お客様にとって完全に理にかなったものになれば導入します。今のところ、その状態には至っていません」

「このセグメントは非常に異なっていて、ロンドンからエジンバラまで運転する人などはほとんど見かけず、都市への通勤・通学、そしてほとんどが娯楽のための交通手段となっています。そのため、いまや運転手付きのロールス・ロイスは20%しかないのです」

「わたしが入社した当時(2010年)は、80%が運転手付きでした。これは、特に若いドライバーが、自分で運転席に座ってクルマを運転することに強い関心を持っていることを示していると思います」

――では、熱心なドライバーをターゲットにしたスポーツタイプのモデルが登場する可能性はあるのでしょうか?

「スポーティという言葉は使わないでしょう。わたし達は、ブラックバッジに素敵なスイートスポットを見つけたのです。ゴースト・ブラックバッジは、ロールス・ロイスのどのモデルよりもスポーティで、通常のゴーストよりも自分で運転する人にとって魅力的なモデルになっています」

「というのも、絶対に譲れないのは快適性だからです。スポーティになればなるほど、快適性の面では妥協が必要です。快適性こそがロールス・ロイスを購入する理由なのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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