ACコブラの末裔 Mk IVとライトウエイト ACスーパーブロワーにAC CRS 後編
公開 : 2022.02.20 07:07
短命ながらも、傑作として語り継がれるACコブラ。その末裔と呼べるモデル4台を、英国編集部が乗り比べしました。
足まわりの柔らかさと旋回性の鋭さ
フォードの302cu.in(4942cc)V8エンジンにベルト駆動のスーパーチャージャーを載せた、ACカー・グループ ACスーパーブロワー。ターボでは難しい、アクセルレスポンスを叶えている。
2000rpmが突破口となり、6000rpm目掛けて怒涛の勢いが放たれる。スピードも比例するように、猛烈に上昇していく。オートクラフトのMk IV ACコブラを、早送りしているようだ。
シフトフィールには、ACコブラ・ライトウエイトと比べて少しぎこちなさがある。それでもメカニカルな締まった感触が手に心地良い。ブレーキの効きも不足ない。
シャシー特性は、Mk IVとライトウエイトとの中間。足まわりの柔らかさと、旋回性の鋭さとが、絶妙に組み合わされている。
ライン取りも正確で、パワーをより路面へ効果的に展開できる。コーナリング中にアクセルペダルを傾けても、シャシーがしっかり受け止める。とてもバランスの良いパッケージングにあるようだ。
コブラの動的能力と収益性を大幅に改善させたスーパーブロワーだが、ACカー・グループ社には、より乗りやすいモデルも必要だった。そこで1998年に誕生したのが、AC CRSだ。
CRSとは、カーボン・ロード・シリーズの略。このコブラを、端的にいい表している。今回の4台では、黒いロールバーが2本突き出たブルーのボディがそれ。
レッドライン社のニール・フィッシャー氏が説明する。「(ACカー・グループを立ち上げた)アラン・ルビンスキー氏は、コブラのレプリカ市場の規模へ関心を寄せたんです」
「そこで彼は、Mk IVの下に相当する価格帯のモデルが必要だと考えました。それには、コスト削減が不可欠でした」
カーボンファイバー製ボディのCRS
スーパーブロワーでコストの掛かっていた部分が、ハンドメイドのアルミ製ボディ。プロテック・モータースポーツ社によるカーボンファイバー製ボディを、Mk IVのシャシーへ載せるというアイデアが導かれた。
ボディ本体は2ピース構造で、重さは僅か22kg。その結果、AC CRSの当時の価格は3万8000ポンドへ抑えることができた。オプションを少し足しても、レプリカと同程度の4万ポンドほどで購入することが可能だった。
今回のブルーのAC CRSは、デモ車両として作られたシャシー番号1。エグゾースト・エンドが下向きだったり、ロールバーが垂直に伸びているなど、以降のクルマにはない特徴が見られる。
ACオーナーズクラブの前会長、バーティ・ギルバート-スミス氏が購入した後、現在は家族が受け継ぎ、歴史の証拠として大切に保管している。「ずっとACのクルマと関わってきました。初めに買ったのは、1965年式のACブリストルです」
「CRSのクラシカルなところがとても気に入っています。ルーフはエース・ブリストルと同じです。でも、カーボンは最新の素材でしたから、そのアイデアも気に入っています」。と元オーナーが話してくれた。すでに走行距離は12万kmを超えている。
エンジンはフォード社製の302cu.in(4942cc)で、パワーもMk IV ACコブラと同等の228ps。1188kgという車重も変わらない。
運転席へ座って最初に気付いた違いは、レザー巻きステアリングホイールの太いリム。フロントタイヤから伝わる情報が、若干フィルタリングされる。