ウイリスMBからジープ・ラングラーへ 80年間の3世代を比較 自由のクルマ 前編

公開 : 2022.02.12 09:45

優れた能力を発揮した小型偵察車両

1940年、第二次大戦が激しさを増していくなかで、アメリカ陸軍は古いフォード・モデルTにかわる、新しい小型偵察車両の必要性を実感していた。そこで必要な仕様をまとめ、135社の製造関連企業に提案を打診する。

それに対し、アメリカン・バンタム社とウィリス・オーバーランド社の2社から返答があった。なかでもバンダム社は動きが迅速で、設計開始から49日目にはプロトタイプが完成。試験走行をスタートさせていた。

ウイリスMB(1941〜1945年/北米仕様)
ウイリスMB(1941〜1945年/北米仕様)

ところがバンタム社は経営が不安定で、設計や生産能力にも不安があった。そこで陸軍は、ウイリス社だけでなくフォード社にも提案するよう働きかける。さらに2社へはバンダム社の設計内容を開示することで、それぞれの改良を加速させた。

3社からプロトタイプが提供されると、陸軍は実戦での試験を実施。最もパワフルだったのは、60psの4気筒エンジンを搭載するウィリス・オーバーランド・クワッド。バンタムは最も燃費が良く、フォード・ピグミーは設計に優れ、製造品質も高かった。

試験を経て陸軍は仕様の改定を加え、最終的にウィリス・オーバーランド社のMBが1940年に受注契約を掴み取る。フォード社は必要な需要に応えるため、MBのライセンス生産契約を結び、バンダム社は牽引するトレーラーの生産を任された。

完成した小型偵察車両は、優れた能力を発揮した。速く機敏に走り、悪路に対応できるだけのタフさがあった。武器を積んだトレーラーを引っ張り、機関銃をリアシートに載せて戦ったほか、幌をかけて救急車としても利用された。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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