マツダ・ロードスター 最軽量「990S」はなぜ生まれた? 開発主査に訊く

公開 : 2022.02.04 05:45  更新 : 2022.02.04 11:24

なぜ990Sは生まれた?

――990Sは、いつからの構想なのでしょうか?

「軽量化に対する限定車の構想は、わたしがロードスターの副主査時代からありました。2019年に主査になって、自身の得意分野で(今後の改良を)やりたいと思ったので、(会社側に990S案を)すぐに提案しました」

マツダ・ロードスター990S
マツダロードスター990S    マツダ

――そもそも、Sのユーザーはどういった考えを持っているのでしょうか?

「全国のロードスターのファンミーティングでファンの皆さんと交流してきた。その中で聞かれるのは、『Sこそロードスター』という声で、価格設定がリーズナブルであることもあわせて、ロードスターを純粋に楽しんでいる方が多くいらっしゃいます」

――軽量化について、どのような案があったのでしょうか?

「さまざまな検討をしました。例えば、カーボンファイバーのボンネット、また鉛バッテリーと比べて7kgも軽量化できるリチウムイオン電池などがあります。ただし、コストなどを考慮した結果、いまある(ロードスターとしての)資産を活用して、バネ下荷重の軽量化を最優先することになりました」 

――サスペンションセッティングもかなり変わっているようですが?

「Sグレードをベースで、という意識ではなく、(ロードスターとしての設計における)ショックアブソーバーの下限値から、1番(可動域である)ストロール量をとって、前後サスペンションのバランスを取る方向のチューニングを目指しました」

これからNDどうなる?

――つい先ほど試乗して、本当に乗りやすく、上質になったことに驚きました。

「そのとおり、普通に乗って楽しい、またワインディングでもしなやかにサスペンションが動いてクルマの動きがつかみやすいと思います」

「今後もNDの改良を続けていきたい」と齋藤氏はいう
「今後もNDの改良を続けていきたい」と齋藤氏はいう    桃田健史

――では確認のため、そもそもSグレードは、他のグレードと何が違うのでしょうか?

「リアのスタビライザーがない、ボディのメンバーを最適化している、また(防音防振としての)インシュレーターも少ないなど、軽量化のために外すことをやりきっています。また、デファレンシャルギアがLSDではなくオープンデフとなっています」

――そうしたSの基本設計に、今回のバネ下荷重低減とエンジン制御やカラーコーディネーションがベストマッチしていますね。

「パワートレイン側からも提案があり、(仕様変更に対する)許可に関与しない範囲で、アクセルレスポンスの改善とトルクカーブの立ち上がりを調整しました。また、スポーツカーでは情熱的なエネルギーをイメージするカラーが一般的だが、あえて幌や室内に落ち着いたタイプのブルーをいれました」

――最後に、ロードスターこれからについてコメントをお願いします。

「NDロードスターは(クルマとしての)ポテンシャルが高く、(改良の対象となる)引き出しが多いクルマです。今後も、商品改良を続けていきたいです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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