「氷河期」の終わり キミ・ライコネン、20年のF1人生を語る 独占インタビュー

公開 : 2022.02.05 06:05

引退後の計画 市販車開発の可能性は?

ライコネンは、F1最多出走記録349回を誇る。2年のブランクを経ての快挙である。しかし、彼は「正直言って、どうでもいい」と言う。「最多レース数や最多優勝数といった記録は、いつかは破られるものだ。いくつかの記録は残るかもしれないが、常にベストな人が現れ、またその次の人が来る」

「僕が始めたころは14レースかそこらだったから(実際は17レース)、年に10レース多く走れば、その分早く到達できる。それだけ長くレースをしていたから、誰かに先を越されても気にしないようになるんだ」

キミ・ライコネン
キミ・ライコネン

アロンソは現在333回出走しているので、今シーズンで記録を更新すると考えれば、それは当然のことだろう。しかし、アロンソがアルペンでレースをしている間、ライコネンは何をしているのだろうか?前回F1を休んだときは、ラリーやNASCARに挑戦していたのだから、可能性は無限大にあるように思える。

「あの頃は、もっと若かったし、ラリーもやってみたかったんだ。予定はゼロさ。何か面白いことがあれば、やるかもしれない。でも今は、大きな計画は立てたくない。やっと自由に選択できるようになったし、家族と一緒に普通のことができるようになった。それを変えるような計画は立てたくないんだ」

ドライバーによっては、このようなうやむやな返事をするとは信じられないかもしれない。しかし、ライコネンの答えは正直だ。パドックに出没する元ドライバーのテレビ評論家の仲間入りをすることはないだろう。アルファ・ロメオとのつながりをベースに、親会社のステランティスがモータースポーツに力を入れていることを考えると、プジョーのル・マンチームも選択肢になるかもしれない。

また、市販車の方でもチャンスがあるかもしれない。ライコネンはアルファ・ロメオ・ジュリアGTAmの開発に携わったこともあるし、車両開発に興味があるのではないだろうか?

「例えば、初日から参加して、十分な発言力があれば面白いかもしれない。でも、そんなことを考えるには、いろいろなことがうまくいかなければならない。F1と同じで、たくさんの人が関わっていて、どこかで必ず衝突が起こる」

他人ではなく、自分がどう思うか

今後、ライコネンが何をしようとも、彼に対する偏った見方が変わることはないだろう。自分がどのように記憶されると思うかと尋ねると、彼は次のように答えた。

「僕は自分がやりたいと思ったようにできたので満足しているし、人々がどう記憶するかは正直僕にとって何の違いもない。自分にとってどうだったかは分かっているし、少なくともその大半は自分の意思でやったことだから」

キミ・ライコネン
キミ・ライコネン

そこに、彼のポーカーフェイスの裏側を垣間見たような気がした。F1で自分の運命をコントロールしたと言えるドライバーはほとんどいないが、キミはそう言える。

「いい言い方をすれば、多くの葛藤があった」と彼は笑う。「でも、長い目で見ればうまくいった。それが好きな人もいれば、そうでない人もいる。でも、僕は人を喜ばせようとしているわけじゃない。自分にとって正しい生き方をするためにここにいるんだ」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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