作らずにはいられない! 英国随一の模型メーカー、AIRFIX本社に潜入 カーモデル開発現場訪問

公開 : 2022.02.06 06:05

カーモデルはどのように作られるのか

しかし、ベントレー・ブロワーのような美しい自動車は、どのようにして鋼鉄の塊からプラスチックモデルになるのだろうか?デザイン責任者のマット・ホワイティングは、そんなモデルマジックを生み出すオフィスに案内してくれた。部屋のスクリーンにはフォードF150ラプターのデジタルレンダリングが映し出されており、彼のワークスペースはまるでディアボーン(フォードの本拠地)のデザインオフィスのようだ。

「メーカーからモデル製作の許可が下りると、CAD(コンピュータ支援設計)図面が送られてくるので、それを元に金型用のデザインを作成します」とホワイティングは自身の仕事について教えてくれた。

AIRFIXの英国本社
AIRFIXの英国本社    AUTOCAR

「図面は実物ほど細かくありません。例えば、フォードはラプターの構造を1mm単位でデータ化するつもりはないでしょうから、わたし達でその空白を埋めなければなりません」

「しかし、注意しなければならないことがあります。マスタングのモデルで、フォードから牽引フックとリアパーキングセンサーの位置について指摘がありました。古い車種であれば、実物を探し出してレーザースキャンし、約30枚のスキャンを組み合わせて360度のCADファイルを作成してから、金型用に分割する必要があります」

それから、製造とパッケージングの制約に関する知識や、モデラーの挑戦意欲への理解が必要だ。今は3Dプリントでモデルを試作することができるので、どのように組み合わされるかを確認できるという。それでも、現代的な自動車のディテールを再現するのは大変だ。「特に大変だったのはシロンです」と、ホワイティングは明かす。

ブガッティはディテールにこだわるため、ボディラインや通気口、凹凸、エアロなどを正確に再現することに気を配りました。しかし、リアは妥協せざるを得ませんでしたね。実車ではエンジンの上に細長いリブが立っているのですが、モデルではそのリブとカバーの間の空間を埋めなければなりませんでした」

当然のことながら、組み立て説明書の作成は、開発工程の中でも大きな部分を占めている。AIRFIXは幸運にも、ヘインズやフォード出身のテクニカルライター、イラストレーターを起用している。

デカールは数人の専門デザイナーの作品であり、最近の箱絵の多くは、有名なデジタルアーティストであるアダム・トゥービー(Adam Tooby)によるものだ。

AIRFIXのモデルカタログの10%を占めるに過ぎない自動車は、明らかに主役というわけではないが、すべてが美しく、慎重に選ばれたものばかりだ。

「自動車模型を作るのは素晴らしいことです」とラックハーストは言う。「リラックスして夢中になれるし、世代を超えて家族の絆を深めることもできるんです」

さあ、これでテレビの前から離れる口実ができた。堂々と模型作りに励もう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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