いろんな意味で「尖った」クルマ ウェッジシェイプの名車・迷車 19選 

公開 : 2022.02.12 18:05

パンサー・レイザー

パンサー・レイザー(Panther Lazer)は、わずか1台しか登録されていないのも不思議ではない。その極端なウェッジ形状は、同社のボス、ロバート・ヤンケル(1938~2005年)の作品で、「スーパー・ビーチバギー」と称された。3座シート(横に3人並ぶスタイル)の採用など、他と違うことをしようとするあまり、顧客を見つけることができなくなってしまった。

矢印のような奇抜なボディの中身は、ジャガーXJのコンポーネントを頑丈なスチール製シャシーに取り付けた、比較的オーソドックスなものだ。レイザーは失敗に終わったが、ヤンケルは「リマ」や「カリスタ」といったレトロ調のロードスターで成功を収めている。

パンサー・レイザー
パンサー・レイザー

ポンティアック・フィエロ

しばしば揶揄されるポンティアック・フィエロだが、その大胆さは少しは評価されるべきだろう。ハルキ・アルディカクティとジョージ・ミリドラグが手がけたそのスタイリングは、明らかにフィアットX1/9の影響を受けており、すっきりとしたシンプルなウェッジシェイプを実現している。また、米国の自動車メーカーで初めて量産されたミドエンジンのスポーツカーでもある。

しかし、米国ではフィエロの存在感は薄く、その主な理由は2.5L V6エンジンにあった。当時としては優れた空力特性を持つフォルムであったにもかかわらず、最高出力93ps、最高速度は158km/hと控えめだった。140psに強化した2.8Lエンジンも用意されたが、結局5年間の販売台数は35万5000台にとどまり、ゼネラルモーターズは大きな損失を出したのである。

ポンティアック・フィエロ
ポンティアック・フィエロ

リライアント・シミターSS1

マツダロードスターに先駆けて発売されたリライアント・シミターSS1は、小型オープンスポーツカー市場を独り占めできるはずだった。しかし、垂れ下がるようなウェッジスタイルに抵抗があったのか、顧客の多くはホットハッチを選択した。これはイタリア人デザイナー、ジョバンニ・ミケロッティ(1921~1980年)の作品だが、彼の最高傑作とは言い難い。

1992年、リライアントは改良を加えてセイバーとし、より滑らかなラインと日産シルビアの1.8Lターボエンジンをオプションで導入した。しかし、1989年にマツダ・ロードスターが登場したこともあり、遅きに失した感は否めない。

リライアント・シミターSS1
リライアント・シミターSS1

スバルXT

1985年、スバルXTは、同社の意思表示として大きな足跡を残した。XTは、堅実ではあるが退屈なセダン、ワゴン、ピックアップなどからスバルを前進させたモデルである。ポルシェ924 Sとほぼ同じ価格の、ウェッジシェイプのクーペの登場だ。

スバルは4輪駆動を標準装備し、1.8Lフラット4エンジンを搭載して、0-97km/h加速9.5秒という立派な性能を実現し、価格を正当化した。さらに興味深いのは、フラッシュ式のドアハンドルや、ボンネットラインの下に隠れるシングルワイパーなどのディテールである。その結果、空気抵抗を表すCd値は0.29となり、ウェッジスタイルの効率の良さが証明された。

スバルXT
スバルXT

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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