RAV4やヴェゼルも 「SUVタクシー」のメリットは? タクシー業界のクルマ選び事情 

公開 : 2022.02.13 05:45

SUVタクシーのメリットは?

国土交通省は当時、タクシー車両として定められていた基準が廃止された理由について「車両の安全性が向上していること、タクシー専用車ではない一般的な車両を用いても安全上の問題がないこと、国際的にみてタクシー車両として定める基準が日本特有であること」などと説明した。

たしかに、今どきの常識的なクルマであれば、タクシーとして使って不都合があるとは思えない。

トヨタの販売するJPNタクシー
トヨタの販売するJPNタクシー

さて、SUVのタクシーに話を戻そう。SUVを使うと、どんな利点があるのだろうか?

実は筆者はかつて、海外のある都市でタクシー車両がSUVばかりだった光景を見て驚いたことがある。

それは15年ほど前のアメリカ・ラスベガスで、理由はすぐにわかった。

ラスベガスは観光客が多く、一方で空港と街が近くうえに街中だけで滞在を終える人が多いから、ほかのアメリカの都市に比べると訪れた人がレンタカーではなくタクシーを利用することが多いのだ。

その際には、大きなスーツケースをセダンよりもたくさん積めるSUVのラゲッジスペースが重宝するというわけだ。

ステーションワゴンのような実用性を求めていると考えれば合点がいく。

冒頭で紹介したヴェゼルやRAV4のタクシーも、オーナードライバーが選んだ前提として同じことがいえるのではないだろうか。

運転手の「好み」による?

SUVではなくステーションワゴンを選べばいいかもしれない。たしかにそれは正論だ。

しかし、トレンドの変化もあって国産車のステーションワゴンで選べる車種は多くないのが現実である。

法人タクシーではあるが、石川県のなるわ交通はメルセデス・ベンツGLAをタクシーに導入している。
法人タクシーではあるが、石川県のなるわ交通はメルセデス・ベンツGLAをタクシーに導入している。    なるわ交通

スバルの「レヴォーグ」や「アウトバック」、トヨタ「カローラツーリング」、マツダマツダ6」、ホンダ「シャトル」くらいしか選べない。

現在は販売を終了したスバル「レガシィツーリングワゴン」の個人タクシーは存在するが、世の中の流れと同様に個人タクシー運転手の選択もやはりトレンドを反映しているのだろう。

一方でより実用性が高いミニバンとしない理由は、運転手がクルマ好きで「選ぶならミニバンよりもSUV」……という心情があると思われる。

車の運転で多くの時間を過ごすタクシー運転手は「運転していて疲れないクルマ」や「運転が楽しめるクルマ」を選ぶ傾向が強いようだ。

SUVにどんなメリットがあるかと考えてみても、実用面ではラゲッジスペース以外にはこれだというものは見つけられない。

燃費やタイヤ代など、ランニングコストでもSUVの利点はなさそうだ。

そう考えてみれば、タクシー車両にSUVを選ぶのはやはり、理屈ではない部分にあると考えるのが自然だろう。

もしもSUVタクシーに乗る機会があれば、運転手さんにはぜひ、選んだ理由を尋ねてみたいと思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    工藤貴宏

    Takahiro Kudo

    1976年生まれ。保育園に入る頃にはクルマが好きで、小学生で自動車雑誌を読み始める。大学の時のアルバイトをきっかけに自動車雑誌編集者となり、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。はじめて買ったクルマはS13型のシルビア、もちろんターボでMT。妻に内緒でスポーツカーを購入する前科2犯。やっぱりバレてそのたびに反省するものの、反省が長く続かないのが悩み。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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