Eクラスからのバトンタッチ メルセデス・ベンツEQE 350へ同乗 航続659km 後編

公開 : 2022.02.15 08:26

低い重心位置で機敏に身をこなす

回生ブレーキの強さは、EQSと同様にステアリングホイール裏にあるパドルで、D+とD、D−の3段階から調整できる。D+では、アクセルペダルから右足を浮かせても流れるように惰性走行するが、D−ではブレーキを掛けたように急激に減速する。

その中間がD。従来のエンジンブレーキと同じ減速感が与えられ、緩やかに速度が落ちていく。

メルセデス・ベンツEQE プロトタイプ
メルセデス・ベンツEQE プロトタイプ

大きな駆動用バッテリーをフロア下に詰め込んでいるため、重心位置は低い。EQEはEクラスより安定感が高く、路面へしっかり追従して走る印象を受けた。レッカーがスポーツ+でコーナーを攻め込むと、タイトに食らいつくように感じられた。

EQEはボディサイズが大きく、車重もかさむ。それでも走りに妥協はなく、とても機敏に身をこなす。姿勢制御にも優れ、横方向の負荷が増大すると同時に、抑制されたロールも徐々に増えていく。

操縦性は、直感的で反応の予想がしやすく、常に落ち着いている様子。アダプティブダンパーと、オプションのエアサスペンションの処理からも感じ取れる。

同乗した350には、オプションとなる四輪操舵も装備されていた。システムには2段階あり、1つは最大4.5度、もう一方は最大10度までリアタイヤの向きが変わる。後者なら、Cクラス並みの最小回転半径が得られるという。

従来モデルを凌駕する訴求力

ダンパーの設定は硬めで、ホイールベースが短いため、乗り心地の質感はEQSほど平穏ではない。それでも、印象的なしなやかさと安定感を実現させていた。タイヤは265/50と295/40という20インチながら、車内にはほとんど衝撃も伝わってこなかった。

大きなうねりや橋桁の継ぎ目などを通過すると、流石に揺れは伝わるものの、ツギハギ部分や舗装が剥がれた穴などは、巧みに均せる。この足さばきは、モデルSより大幅に上質だと感じる部分。長距離移動も極めて快適にこなせそうだ。

メルセデス・ベンツEQE 350 プロトタイプ
メルセデス・ベンツEQE 350 プロトタイプ

具体的なEQEの印象は、実際にステアリングホイールを握ってからとしたいが、第一印象のインパクトは間違いなく強かった。製造品質や走行時の洗練性、動的能力や乗り心地、インテリアの雰囲気など、その訴求力は従来モデルを凌駕している。

内燃エンジンのEクラスだけではない。テスラ・モデルSに対してもそうだ。

後輪駆動の350はエントリーグレードということで、圧倒させるほどのパフォーマンスは備えていないかもしれない。といっても、加速力は充分以上。大きな駆動用バッテリーと高度な回生ブレーキのおかげで、航続距離はクラス最高水準でもある。

メルセデス・ベンツEQEの競争力は間違いなく高いはず。自宅に充電器があれば、充足度の高いラグジュアリー・サルーンになるのではないだろうか。運転できる日が、今から楽しみでならない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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