アルファ・ロメオ・ジュリエッタ1.4TB マルチエア・スポルティーバ
公開 : 2014.06.06 23:50 更新 : 2017.05.29 18:24
■どんなクルマ?
アルファ・ロメオ・ジュリエッタはアウディA3スポーツバックやBMW 1シリーズに対抗すべくモデルとして、1.4TBマルチエアというグレード名を冠してフェイスリフトを受けた。去年の暮れにフランクフルト・モーターショーでこのクルマが展示されているのを初めて見た時から、われわれは好意的な印象を抱き続けていることを最初に書き記しておく。外観上は、新しくデザインされたアロイ・ホイールや、フロント・グリルとヘッド・ライトなどの小変更に留まるのだが。
言うまでもなく既に投入済みのディーゼル・エンジンのジュリエッタは出力と燃費を高いレベルで両立させている一方、こちらのガソリン・エンジンは最高出力172psを発揮することで、ジュリエッタの中で一番パワフルなモデルとしての役割を担う。組み合わされるギアボックスはアルファ・ロメオ製のデュアル・クラッチ・オートマティックとなり、さらにテストに借りだしたクルマには(いささか高価すぎるとは思うのだが)£260(3万8千円)のパドル・シフトがステアリングに据えられている。ちなみにこのエンジンを搭載するモデルは、ガソリン・エンジンを搭載するモデルのうち58%の売上が期待されている。
元来アルファ・ロメオがそうであったように他のライバルを寄せ付けない美しさは健在だ。特に丸みを帯びたヘッドライトは、フロントに鎮座する三角形の大きくキリリとしたグリルに対して愛らしい印象を与え、外観は総じて見る者の視線を釘付けにさせる不思議な魔力がある。内装も同様、新たな素材と快適なスポーツ・シートの恩恵を受けて全体的な質感は一歩上のレベルに達したと言ってよさそうだ。
テスト車両は最上級グレードであるスポルティーバである故に、18インチのアロイ・ホイールとスポーツ・サスペンション、フロント・パーキング・センサー、ペイントされたブレーキ・キャリパー等の外観上の差別化が図られている。また内装においても、レザーとアルカンターラが用いられたトリムや、レザー・ステアリング・ホイール、アイドリング・ストップ・システムや車内でインターネット接続が可能となるUコネクト6.5インチ・インフォテインメント・システムが標準で用意され、車両価格は£25,785(382万円)となる。それらに加えて、メタリック塗装、アップグレード版のサウンド・システム、また前述のパドル・シフトがオプションで追加されているため最終的には£27,375(376万円)のプライスタグを掲げる。
■どんな感じ?
先代からの改良版であるだけに、細部に渡ってワンランク上の充実が図られていることは間違いない。内装のパネル同士のフィッティングや仕上げは特にレベルを上げた点のうちの一つだ。ただし、まだまだ多量の樹脂製パーツが用いられていることも事実であるし、多くの人が違和感を覚えるであろうステアリングの輪郭にも改善の余地がある。加えて残念なことにUコネクト・インフォテインメント・システムは実用性が高いが、ジュリエッタの内装からは少し浮き立っているように感じられた。その反面、シートは快適性とサポート性の双方に満足できる上、レザー・スポーツ・ステアリングの仕立ても心地良い。
前の座席の間に備え付けられたアーム・レストの小物入れは収納能力が高いが、だからといってその他の収納が著しく少ないジュリエッタの罪滅ぼしになっているかと言えば、そうではない。また些か実際的な話ではあるけれど、オーディオ接続用のコネクターは運転席からは遠い所に位置しているし、長身のドライバーにとってクルーズ・コントロール用のレバーの位置はとても分かりにくい。
フロントのスペースは充分に確保され、リア・シートも、日本列島縦断などをしない限りはさして不満をもたらさない程度のスペースが用意されている。ロード・ノイズは速度は乗れば問題アリで、長距離の走行では我慢ならないレベルである。
と、ここまでネガティブな面を書き連ねてきたが、この1.4ℓエンジンはスポーティーで運転していて楽しい気持ちになれる。エンジンに負荷をかけるとエグゾースト・ノートのボリュームはやや大きいと感じるが、多くの場面においてレスポンスに優れ、2500rpmより上からは力強いトルクの湧き上がり感じることができる。TCTデュアル・クラッチATとマニュアル・トランスミッションのどちらを好むかと問われれば、依然として後者と答えるのは、やはりダイナミック・モードでさえもATのレスポンスにに鋭さに欠ける場面があるからである。シフト・パドルもやむを得ずマニュアル操作を必要とする時には、それなりの仕事をしてくれるが価格相応の価値あるオプションかといえば、そうではない。
とは言うものの、ダイナミック・モードでのスロットル・レスポンスは鋭いためスポーツ・ハッチバックとしての満足度は高い。ディーゼル・モデルのジュリエッタにも同じことが言えるのだが、ニュートラル・モードでの著るしい低燃費そっち退けで、ダイナミック・モードを常時使用する向きもあるだろう。複合サイクルでの燃費は19.6km/ℓを達成し、CO2排出量は119g/kmまで抑えているのだから経済性にも優れているといえるだろう。
また、高速コーナリングでの安定感は非常に優れ、ステアリングのフィードバックやブレーキのレスポンスは特筆に値することも、ここに書き加えておく。
■「買い」か?
もちろん運転する楽しさはどのライバルにも勝るのだが、車両価格は内装のフィッティングや仕上げが格上のアウディやBMWのテリトリーに届くレベルであるため、まさにこの£25,785(382万円)という価格こそが最大の欠点である。
だけれどもアルフィスタにとっては内装の仕上げは最重要項目ではないはずだから、TCTトランスミッションではなくマニュアル・トランスミッションを選択しさえすれば、ドライビングに熱中でき、実用性に優れながらも美しいプロポーションを持つジュリエッタが最有力候補として相応しいと言えるだろう。
(ダレン・モス)
アルファ・ロメオ・ジュリエッタ1.4TB マルチエア
価格 | £25,785(443万円) |
最高速度 | 217km/h |
0-100km/h加速 | 7.6秒 |
燃費 | 19.6km/ℓ |
CO2排出量 | 119g/km |
乾燥重量 | 1310kg |
エンジン | 直列4気筒1368ccターボチャージャー |
最高出力 | 172ps/5500rpm |
最大トルク | 35.4kg-m/2500rpm |
ギアボックス | 6速デュアル・クラッチ |
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