自動車業界の半導体不足 2022年末に「緩和」見込み だが終わるわけではない

公開 : 2022.02.15 06:05

世界中で自動車生産を停滞させている半導体不足は、供給の正常化により今年末には緩和すると見られています。

自動車生産への影響は半減

過去1年間にわたって世界中の自動車生産を抑制してきた半導体不足の問題は、供給が正常化するにつれて今年末には緩和されるというのが、業界内のコンセンサスだ。

今年は黄金の1年になるはずだった。世界的なパンデミックから経済が回復し始め、例年以上に消費意欲の旺盛な顧客が新車を買い求めるようになった。しかし、世界の半導体製造業者からの供給が減少したことで、自動車メーカーはどのモデルを作り、どの顧客を満足させるか、選択を迫られることになった。

半導体は自動車のあらゆる機能制御に必要な部品だ。
半導体は自動車のあらゆる機能制御に必要な部品だ。

先月、テスラのイーロン・マスクCEOは、「昨年はサプライチェーンの問題を解決し、コードを書き換え、半導体を変更したり数を減らしたりすることに、多くのエンジニアリングと経営資源を費やした」と述べている。

自動車メーカーは比較的収益性の高いモデルの生産に注力しており、納車を待つ新車購入者の多くは、辛抱を強いられている。

調査会社のLMCオートモーティブの推定によると、自動車メーカーは昨年、さらに960万台の自動車を製造できるはずだったという。同社は正確な生産台数予測を誇るが、昨年は半導体不足の影響を強く受け、予測の下方修正を余儀なくされた。

LMCオートモーティブの試算では、最も大きな打撃を受けたメーカーはフォードで、全世界で126万台、次いでフォルクスワーゲン・グループが115万台、ゼネラルモーターズが109万台となっている。また、欧州市場での販売台数は2020年から1.5%減少し、2018~2019年の平均からはなんと26%も減少しているという。

しかし今年は、車内のあらゆる機能を制御するマイクロコンピュータを比較的多く確保できるため、半導体不足で失われる生産数は480万台に半減すると算出している。

LMCオートモーティブのピート・ケリー社長は今月初め、「需要は依然として供給を上回っており、特に成熟市場(欧州や米国など)では深刻だ」と懸念を示した。

危機を乗り切ったメーカーも

キアの英国部門責任者であるポール・フィルポットは、1月のAUTOCARの取材に対し、「今、当社は過去最大の受注数を誇っている。もし自由な供給があれば、業界は活況を呈するだろう。人々は、使えるお金を持っている」と述べた。

キアとその兄弟ブランドであるヒョンデ(ヒュンダイ)は昨年、他社よりもうまく半導体不足を乗り切ったため、実は大きく成功したメーカーの1つである。

キアの欧州販売の中核を担うクロスオーバー車「スポーテージ」
キアの欧州販売の中核を担うクロスオーバー車「スポーテージ」

欧州の自動車業界団体ACEAのデータによると、ヒョンデ・グループ(ヒョンデ、キア、ジェネシス)は昨年、欧州市場で102万台を販売。前年比21%増でルノー・グループを上回り、欧州最大の成長企業となった。

トヨタも好調で、トヨタ車とレクサス車の販売台数は9.6%増の76万178台となった。

ヒョンデのソ・ガンヒョン副社長は、今年の第3四半期には半導体生産が正常化すると予測し、同社の販売台数はパンデミック前の水準に戻るはずだと述べている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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