自動車業界の半導体不足 2022年末に「緩和」見込み だが終わるわけではない
公開 : 2022.02.15 06:05
グループ会社の恩恵
SUVのような高需要・高収益モデルを優先し、エントリーモデルを無視して、グループ内のブランド間で半導体を共有することができれば、この問題は対処可能であった。ベントレー、フェラーリ、ランボルギーニ、ロールス・ロイスなど、大きなグループに属する高級車ブランドは、いずれも売上高で過去最高を記録している。
その一方で、エントリーレベルのモデルはなかなか手に入らない。ジャガー・ランドローバー(JLR)の最高財務責任者エイドリアン・マーデルは最近、「我々は意識的に、顧客が最も価格の低いモデルを注文することを避けている」と述べた。
JLRにとって厄介なのは、展開するモデルがすべて高価であることだ。ティエリー・ボロレCEOは会見で、「当社は高級車しか展開していないので、低価格車と高級車の間にほとんど機動的な余地がない」と語っている。
JLRは半導体不足の中、15万5000件の膨大な受注残を抱え、中でもランドローバー・ディフェンダーの受注は現在3万7000件に達しているという。
高度な半導体に頼っていると、新たな調達先を見つけるのは「非常に困難」だとボロレは言う。しかし、イーロン・マスクは「非常に性能の低い」ものまで含めて、あらゆる種類の半導体供給に影響があると語る。「シートを前後に動かすための小さなチップとかね。それが実は大きな問題だったんだ」とマスク。
米商務省が半導体の生産者と消費者を対象に行った最近の調査によると、あらゆる種類の半導体に対する需要の高まりが、この問題をさらに悪化させたという。調査では、自動車から携帯電話、ゲーム機に至るまで、半導体を多く必要とする消費財の需要が2019年から2021年にかけて17%増加したとされている。
「この半導体不足は、需要と供給の著しいミスマッチの結果である」と米商務長官ジーナ・ライモンドは述べ、第一の問題は半導体工場の生産能力不足であると結論づけた。
半導体のアジアへの依存度を下げたい欧米諸国にとって、半導体不足は喫緊の課題となっている。欧州連合(EU)は、半導体工場の現地開発を支援する「欧州半導体法(European Chips Act)」まで導入し、インテルなど半導体大手もこれに前向きな姿勢を示している。
こうした生産能力向上の取り組みが実を結ぶには時間がかかるが、新たな問題(例えば、新型コロナウイルスの新しい変異株など)が発生しなければ、2022年末には自動車供給がある種の正常な状態に戻ると見られている。
「トイレットペーパー問題」
イーロン・マスクは、半導体不足の一因は買いだめにあると見ている。パンデミック初期に人々が生活必需品を買い占めたように、一部の企業は半導体でも同じことをしたと主張しているのだ。
「“トイレットペーパー問題”はある程度あると思う。お尻を拭くニーズがものすごく高まったわけではなく、みんながパニックになっただけ 」
性能が上がり、必要数を減らすことができる新しい半導体が、今後この問題を解決していくだろう。「次のチップは、少ない下痢で同じことを行うことができる」とマスクは言ったが、ちょっと例えが悪いかもしれない。